2024年4月23日(火)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2020年7月14日

「経済」以外はバイデン有利

 USAトゥデイ紙とサフォーク大学(東部マサチューセッツ州)が行った政策分野に関する共同世論調査(20年6月25~29日実施)の結果をみてみましょう。「経済」「人種関係」「移民問題」「新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)」「国家安全保障」「米中関係」及び「医療保険」において、「どちらの候補が大統領としてより良い仕事をすると思いますか」という質問に対して、有権者は「経済」以外の全ての政策分野でバイデン前副大統領と回答しました。「経済」はバイデン氏の強みになっていません。

 そこでバイデン氏は7月9日、幼少期を過ごし、しかも労働者が多い東部ペンシルべニア州スクラントン近郊で、経済復活計画を発表しました。連邦政府が米国製品の購入拡大に4000億ドル(約43兆円)、次世代技術の研究開発に3000億ドル(約32兆円)を投じることにより500万人の雇用が創出できると試算しています。法人税率を現行の21%からオバマ前政権時代の28%に戻す計画も明らかにしました。

 バイデン前副大統領は同州での演説で大企業や富裕層ではなく、中小企業及び労働者が恩恵を受ける減税を行うと主張しました。この点はトランプ大統領の経済政策と対照的なのですが、バイデン氏の経済復活計画は製造業と労働者を最優先にしています。米ニューヨーク・タイムズ紙のコラムニストであるデイビッド・ブルックス氏はバイデン氏の経済復活計画を「異なったバージョンの『アメリカ・ファースト(米国第一主義)』」と呼んでいます。

 そこが、トランプ大統領にとって大問題なのです。バイデン氏はトランプ氏の支持基盤である中西部の白人労働者票を奪い取る可能性が高いからです。仮にそうなれば、白人労働者、退役軍人、キリスト教福音派等から構成されたトランプ氏の白人中心の「単一文化連合軍」が崩壊するという最悪のシナリオが現実になってきます。

 ロイター通信とグローバル・マーケティング・リサーチ会社イプソスによる共同世論調査(20年7月6~9日実施)によれば、「経済一般」と「雇用」に関するトランプ大統領の支持率は共に48%で、50%を切りました。バイデン氏はリーマンショックから米自動車産業を救った経験を強調し、今回も米経済を復活できるという確信を有権者に持たせることができれば、「経済」は弱みから強みに変わる公算があります。

「熱意のレベル」の低さ

 とはいうものの、バイデン前副大統領候補には未だに克服できない弱みがあります。バイデン氏に対する有権者の熱意のレベルの低さです。

 保守系の米FOXニュースが行ったバイデン・トランプ両氏に投票する動機づけに関する世論調査(20年6月13~16日実施)では、バイデン支持者の63%が、「トランプ勝利に対する恐怖」と回答をしました。「バイデンに対する熱意」と答えた支持者は、31%に止まっています。

 一方、トランプ支持者の33%が「バイデン勝利に対する恐怖」と答え、62%が「トランプに対する熱意」と回答しました。トランプ支持者の熱意のレベルは、バイデン氏の2倍(62%対31%)も高いわけです。

 他の世論調査においても、バイデン前副大統領に対する熱意のレベルの低さは明確に現れています。米ワシントン・ポスト紙とイプソスが18歳以上の黒人を対象に行った共同世論調査(20年6月9~14日実施)によると、バイデン氏に投票する理由として、49%が「バイデン支持」、50%が「反トランプ」を挙げました。「反トランプ」が僅か1ポイントですが「バイデン支持」を上回っています。バイデン氏に対する熱意よりも、「反トランプ感情」が強いということです。

 確かに現地調査を行うと、トランプ・バイデン両氏に対する熱量の差を感じます。トランプ大統領は支持者集会を約2万人が収容できる多目的アリーナで行うのに対して、バイデン氏は高校などの体育館で集会を開催します。

 結局、現時点でバイデン氏の弱みは「経済」と「熱意」です。

 ただ、最終的にバイデン氏に対する熱意のレベルの低さが同氏に不利に働くかは見極める必要があります。

 今回の選挙では「トランプ勝利に対する恐怖」及び「反トランプ感情」が強いので、熱量の少なさは影響を及ぼさないのではないかという見方があります。

 USAトゥデイ紙とサフォーク大学が2016年9月1日に発表した共同世論調査の結果をみてみましょう。クリントン支持者に対して同元国務長官に投票する理由を尋ねたところ、67%が「クリントン支持」、29%が「反トランプ」と回答しました。前回の選挙と比較すると、今回は「反トランプ感情」が強いので、バイデン氏に対する熱意のレベルの低さは、さほど影響を与えないと捉えることができるからです。


新着記事

»もっと見る