2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年6月29日

 アフガン戦争やイラク戦争の結果、欧州のNATO諸国の国民は、域外で役割を果たすことに消極的になっているように思われます。フランスのアフガン早期撤退などもその表れです。

 また、NATOは米国の西海岸で太平洋に接していると言っていますが、これはあくまで米国人の見方であって、欧州諸国民がアジア太平洋の安全保障問題をNATOの問題と見なすとは思えません。伝統的にNATOは欧州の安全保障のために、米国を引き入れ、ドイツを抑え、ロシアを排除することを目指してきたのであり、域外活動は例外という意識は今でも強いように思われます。

 論説が日本をNATOの「自然な同盟者」、「最強の友」と高く評価しているのはありがたいことですが、今後NATOがアジア太平洋で大きな役割を果たすという前提で物事を組み立てるのは、欧州諸国民の感覚、感情から見て適切とは思えません。

 要するに、期待し過ぎると期待外れになるので、期待を押さえつつ、先方の出方にあわせて実際的な協力を模索していくのが良いと思われます。また、NATOにアジアの安全保障問題への理解を深めてもらう必要もあります。フランスはロシアにミストラル級の軍艦を売却しましたが、ロシアは北方領土防衛を念頭にその内の一隻を極東に配備する予定です。NATOにそうした問題に配慮してもらうだけでも、日・NATO協力の意味はあるでしょう。

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