下腹と腰まわりを締め付け、腰にかかる負担を緩和する。コルセットやこの種のベルトは通気性が悪く、ムレるのが難点だったが、吸水性と速乾性の高い2つの繊維素材を組み合わせることで改善した。4月に発売すると口コミでの評判も広がり、今年度上期は当初計画を約3割上回る4000本の販売を見込んでいる。
「腹圧」に着目
婦人服の縫製を本業とする山本縫製工場(香川県坂出市)が、オリジナル製品強化策の一環として開発した。締め付け圧の高いハード(7900円)と、普通タイプのソフト(6900円)の2種類があり、各4サイズ(男女兼用)を用意している。縫製はすべて自社で行っており、コートの裾縫いなどに使う技術も応用して丈夫な作りにしている。ベルト幅を広げたいといった特注にも、1000円から2000円程度の追加で応じる。
ムレ防止機能とともに、このベルトの大きな特徴は「腹圧」に着目した点だ。開発した代表取締役の山本益美(61歳)によると、腹圧とは内臓などを支える腹筋や背筋の力だという。これらの筋肉が落ちたり、腹にゼイ肉が付いたりすると腹圧は低下し、腰椎に負担をかけ、腰痛の一因となる。
重量挙げの選手がベルトを巻くのは、腹圧を高めて筋肉の力を引き出すためであり、この健康ベルトも同様のメカニズムに着眼している。山本はこうした腹圧の作用について、10年来の交流がある医師からアドバイスを得た。コルセットなどは、腰椎や腰骨を型に固定して腰を守る発想だが、「アセット」は本体が繊維製品なので、装着して仕事やウォーキングなどの軽運動時にも使える。
加えて、ほとんどの人が悩んでいたムレの問題にも対処したので、幅広い支持を得ることになった。そもそもの商品化のきっかけは、以前から手掛けていた頭部の汗止めだった。作業用のヘルメットを着用する際に巻くハチマキ状のもので、吸汗性の高い素材を使っている。
1年ほど前のある日、山本は取引先の友人から、「これで腰に巻くベルトを作ってよ」と言われた。使っているベルトでは、腹まわりがあせもになって困っているというのだ。この話をほかの取引先関係者にしていると、自分も欲しいとの声が相次いだ。山本は「腰痛に悩む人が周囲にこんなにもいるのか」と驚くとともに、商品化を決意した。手探りだったが、アパレルのデザインや裁断も手掛けてきたので、形状はすんなり決まった。立体裁断のノウハウを生かし、満足できるフィット感も出せた。素材は、十数種類を検討し、綿の7倍程度の吸水・吸湿性がある帝人ファイバー製のものと、速乾性能の高い東レの製品を組み合わせることにした。
吸水素材を速乾性素材で挟み、縫製するという3層構造である。だが、試作してみると難題にぶち当たった。ベルト全体に伸縮性をもたせる必要があるのに、2つの素材の伸縮性には大きな開きがあったのだ。吸水素材は伸びにくく、伸縮力のある速乾性素材と縫い合わせて伸ばすと破れてしまった。