2024年11月22日(金)

古希バックパッカー海外放浪記

2020年7月26日

何日も自炊しながら診察を待つ貧者の群れ

大学病院の総合受付所の人だかり

 大学病院の正門の前はタクシー、リキシャ、バス等でごった返していた。無数の人々が行き交っており排ガスと喧騒の坩堝となっている。ボストンバッグや風呂敷など大きな荷物を持った家族連れが目立つ。

 総合受付所のような建物には数百人の人々が窓口毎に行列を作っている。診療科目毎に窓口があり順番待ちの整理券を待っているようだ。

 総合受付所の前の広場では木陰で人々が所狭しと寝そべっていた。日陰になったコンクリートの階段も含めてざっと200人くらいの人々が大きな荷物と一緒に横になっている。

大学病院の渡り廊下で順番待ちする人々

 大学病院の病棟は幾つかの古いコンクリートの6階建ての建物が渡り廊下で繋がっていた。天幕で覆われた中庭が三か所あり、診療順番待ちの患者と付き添いの家族で満杯であった。地べたに持参したゴザや布を敷いている。

 10メートル四方もある大きな共同の炊事場のような場所では女たちが煮炊きや洗濯をしていた。

大学病院の炊事洗濯もできる共用スペース

 病室はベッドが30床も並ぶ大部屋である。大部屋に裸電球が数個だけで室内は昼間でも薄暗い。ベッドの間隔は50センチくらいで何の間仕切りもない。古い鉄製のベッドの硬い藁のマットの上に各自持参した布を敷いている。天井のシーリングファンは淀んだ蒸し暑い空気をかきまわしているだけだ。

 床にはゴミや埃が散らかって野戦病院や難民収容所よりも衛生状態は悪いのではないだろうか。中国の地方都市の公立病院も混雑して廊下に人が溢れていたが、寝泊まりしている人はいなかった。中国では少なくとも掃除やリネン類の洗濯が行き届いていたことを思い出した。

メディカル・ツーリズムで年間90億ドル稼ぐ先進医療大国インド

 カジュラホのホテルのロビーで何気なく英字新聞を開いたら外国人患者を治療するMedical Tourismで年間90億ドル外貨獲得という見出しが躍っていた。『先進国と同水準の医療を半額で』がキャッチフレーズらしい。

 インド政府も積極的に推進しており高度医療提供病院として国際的評価認証を受けた病院が40近くあり、2017年度実績では50万人もの外国人を治療したようだ。

 インド人医師の医療技術水準が高いことは米英の大病院で多数のインド出身医師が働いていることで明らかである。英国からインドの公立病院の給与の10倍というオファーが恒常的に来ていると公立病院の医師から以前聞いたことがある。

 インドが高度先進医療分野でも地歩を固めていることは理解できる。しかし、他方で何日も野外で寝泊まりして、薄暗い病室での入院生活を甘受する数億人もの貧困層が同時に存在していることも現実なのだ。

次回に続く

  
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