2024年11月22日(金)

オトナの教養 週末の一冊

2020年9月5日

香港人とは? 香港人のアイデンティティって?

 日本の若い子が「オヤジくさい」などと揶揄する形でジェネレーション・ギャップを表現する事があるが、香港にいるとそれ以上の世代間ギャップを感じる。逃亡犯条例改正案に参加したデモ隊の若者と話すとそれを感じることがしばしばだった。

 「現在の20~30代と40~50代以上の違いを結構感じています。若い世代は香港アイデンティティが比較的強くて、中国人としてのアイデンティティが弱いどころか抵抗感すらある場合があります。年上の世代は、中国政府に不満がある民主派の人たちでも、中国人というアイデンティティは維持している印象です。多くの年上の民主派の共通的考えは『中国と中国共産党は別々なもので、中国の人民、土地、文化を愛しても、政権を支持するわけではない』。それに対し、政府を批判する一部の若者はそういった区別をしません。もしくは中国と中央政権を区別できないものかもしれません」

 実際、香港社会は、香港にいつごろ来たか、どうやってきたかですら異なる。中国は50以上の少数民族があるほか、漢民族ですら、客家、呉越などがあり、さらに「あの人は潮州から来た、福建から来た」といってさらに細分化される。それに加え、両親は香港人だがカナダなどの海外に移民。その子どもは海外で生まれ育ち、大人になって来港して働いている人も多く、そういう人たちは広東語は話せるが漢字が読めない人も少なくない。また、香港は貧富の差が非常に大きい社会でもあり、ここだけでも考え方は異なる。

 日本人は最近の香港に対して、民主派と親中派または黄色と青色に区別しようとする傾向があるが、香港はあまりに重層的な社会であり、切り取り方によって香港の顔は変化する。単純に区別するのはほぼ不可能だ。筆者の知り合いが「基本は黄色でも青がまだらに入って来るし、その逆もある。真っ黄色、真っ青な人はほとんどいないと思う」と語っていたがその通りだろう。銭氏と話していると香港人のアイデンティティは複雑であることを再認識させられた。香港を理解し、サポートしていく上で、我々日本人はそのことを認識しておくべきだろう。

  
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