海野素央の Love Trumps Hate

2020年9月23日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

「メッセージの強度」と意図

 終盤戦の勝敗を分けるのが、メッセージの強度と意図です。トランプ氏のメッセージをみていきましょう。

 トランプ大統領は集会で「我々が勝つと米国が勝つ」と語気を強めたうえで、「バイデンが勝つと中国が勝つ」「バイデンが勝つと暴徒が勝つ」「バイデンが勝つと無政府主義者が勝つ」と主張して、4つのメッセージをセットにして畳みかけます。これらのメッセージの意図は、有権者が非好意的に評価する「中国」「暴徒」「無政府主義者」とバイデン氏を結びつけて、同氏に否定的なイメージを植えつけることです。

 さらに、トランプ大統領は集会で「ハンターはどこに行ったんだ?」と支持者に問いかけています。中国とのビジネスでバイデン氏の次男ハンター氏が、同国から不正に15億ドル(約1568億円)もの多額の献金を受け取ったと、根拠を示さずに強調しています。「オバマ・バイデンは情報機関を使って(16年大統領選挙で)トランプ陣営に対してスパイ活動を行った」とも訴えています。トランプ氏のこれらのメッセージの狙いは、オバマ政権が腐敗していたという印象を有権者に与えることです。

フロリダ州に特化したメッセージ

 トランプ大統領は激戦州フロリダ州の選挙人「29」を獲得するために、「ジョー・バイデンはカストロを愛しているバーニー・サンダースに依存している」というメッセージをキューバ系米国人に発信しました。このメッセージは「反カストロ」「反社会主義」のキューバ系米国人の心を確実に掴んでいます。

 民主党大統領候補指名争いでサンダース上院議員(無所属・東部バーモント州)は、フィデル・カストロ氏を称賛したために、フロリダ州在住のキューバ系米国人から支持を得られませんでした。トランプ氏はそのサンダース氏を政治利用して、バイデン氏と結びつけ、中道穏健派の同氏を社会主義者の「操り人形」とレッテルを貼っています。

 率直に言ってしまえば、トランプ大統領は「バイデンに投票することは、社会主義者に投票を行うのと同じだ」といいたいのです。この戦略はフロリダ州において功を奏しています。

 米NBCニュースとマリスト大学(米東部ニューヨーク州)の共同世論調査(20年8月31~9月6日実施)をみると、フロリダ州におけるラテン系有権者の支持率はトランプ大統領が50%、バイデン候補が46%で同大統領が4ポイントリードしています。

 ちなみに、16年米大統領選挙ではフロリダ州のラテン系の62%がヒラリー・クリントン元国務長官、35%がトランプ大統領に投票しました。クリントン氏が27ポイントの大差で勝利を収めました。

 バイデン氏は「私が暴徒に甘い急進左派の社会主義者に見えますか」と、有権者にメッセージを発信しましたが、トランプ大統領の社会主義者のレッテルを剥がすことができていません。

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