2024年12月23日(月)

Washington Files

2020年9月28日

米軍戦死者への侮辱

 しかもこれに追い打ちをかけたのが、米有力誌「ザ・アトランティック」(9月3日号)の衝撃的スクープ記事だった。同記事によると、トランプ大統領は米軍戦死者たちを「負け犬losers」「間抜けsuckers」との表現を使って侮辱したことが政府、軍高官らの証言で明らかになり、退役軍人協会や軍属の多くから大統領非難の声が一斉に盛り上がり始めたからだ。

 トランプ氏は以前にも自らは徴兵を3度にわたり拒否する一方、ベトナム戦争で負傷し、北ベトナムの捕虜にもなった故ジョン・マケイン元上院議員について「真の英雄とは言えない」と批判、全米の批判を浴びた経緯もあっただけに、さらに苦しい状況に追い込まれたといえる。

 第4点として無視できないのは、高齢者層のトランプ離れだろう。

 ニューヨークタイムズ紙が、ウイスコンシン州など接戦州4州の「投票意思を表明した有権者」を対象に実施した最新調査(9月12日)によると、65歳以上の高齢者層のバイデン支持率が52%だったのに対し、トランプ支持率は40%と大きく水を開けられていることが明らかになった。4年前の大統領選ではトランプ氏がクリントン候補をリードしており、これが逆転したことになる。

 同紙は「高齢者層の間では従来、トランプ支持が多かったが、今回とくに、『人種問題』『国民の統合』『コロナ対策』の3分野においてバイデン氏がトランプ氏を大きく引き離したことは特筆に値する」と指摘。アメリカの65歳以上の人口は近年着実に増加傾向にあり、5400万人(2019年7月現在)にも達しているだけに、選挙動向に及ぼす影響力も確実に増大しつつある。

 以上のように、トランプ大統領は前回選挙において①低学歴白人層②白人女性票③軍人票④高齢者層―の4大ブロック票田においてクリントン民主党候補を圧倒した結果、当選したが、今回これらのいずれにおいても、バイデン候補にリードを許している実態が明らかになった。

 もしこうした傾向について今後投票日までの6週間余りに大きな変動がないとすれば、トランプ氏の勝ち目はほとんどないことになる。

 果たしてそれをバイデン氏との3回の討論会で覆すことができるのか―いよいよ険しい瀬戸際に立たされつつあることは間違いない。

  
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