2022年8月10日(水)

WEDGE REPORT

2020年10月2日

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知花武佳 (ちばな・たけよし)

東京大学大学院工学系研究科准教授

専門は河川工学。1975年兵庫県生まれ。98年3月東京大学工学部土木工学科を卒業後、同大学院修士課程、博士課程を修了。博士(工学)。その後同大学院工学系研究科にて、研究員、助手、講師を務め、2010年11月より現職。

リスクを減らすために
行政・住民にできること

 今後、リスクを減らすためにわれわれができることは何か。

 短期的には、住民自らが居住地域の堤防の脆弱箇所、水位名称の意義、そして河川の水位上昇速度の特徴を把握し、自らの住まい方と照らし合わせて、水害リスクを見直すことが必要である。

 こうした情報は住民には専門的でわかりづらいことが多い。各市区町村は、河川整備状況に合わせて、わかりやすいマップを発信していくことが必要だ。そして、住民はそれに合わせて、避難や水防の訓練を行い、自助・共助・公助の取り組みを進めてリスクを軽減していくことが必要である。

 そして、中長期的には河川の流域全体を俯瞰(ふかん)して水害リスクの低減を図る「流域治水」を進めることが望まれる。リスク低減を図るにはさまざまな方法があるが、流域の中には、多くの居住地や産業があり、避難が現実的に難しい(暴露率が高く、脆弱性も高い)場所も存在する。また、河川の整備水準もその達成率も地域によってさまざまであるため、浸水する確率も異なりリスクの差が生じている。そうしたリスクの高低を直視して、水害リスクの高いところから低いところへと国民の居住地を移し、洪水の際には水害リスクの高い場所で水を貯留できるようにしていくことが望まれる。

 ただし、こうした流域全体の最適化は、地域間に利害相反をもたらす。そのため、流域全体を俯瞰できる、国、都道府県がリーダーシップを発揮することが不可欠である。まずは移住等について、税制などで誘導していく方策の議論を開始することが必要であろう。

 しかし、トップダウンだけで利害相反の問題を解決するのは困難で、日頃から市区町村や自治会等の地域コミュニティーとも意見交換を行い、時間をかけて情報と考えを共有しておかなければならない。災害が起きるたびに場当たり的な対処をするのは、もう終わりにするべきだ。

Wedge9月号では、以下の特集を組んでいます。全国の書店や駅売店、アマゾンなどでお買い求めいただけます。
宇宙が戦場になる日
PART 01         月は尖閣、火星はスカボロー礁  国際宇宙秩序狙う中国の野望
PART 02         遠のく米中の背中  ロシアの生き残り戦略   
CHRONOLOGY  新たな文明を切り拓くカギ  各国の宇宙開発競争の歴史と未来  
PART 03         盛り上がる宇宙ビジネス  日本企業はチャンスをつかめ    
COLUMN         地上と同様、宇宙空間でも衛星を狙うサイバー攻撃
INTERVIEW      「宇宙」を知ることで「地球」を知る   山崎直子(宇宙飛行士) 
PART 04         守るべき宇宙の平和  日本と米国はもっと協力できる 

  
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◆Wedge2020年9月号より

 

 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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