2024年4月26日(金)

山師の手帳~“いちびり”が日本を救う~

2020年10月3日

ルワンダの闇を解明する

 さて、前回は女性議員が一番多い国ルワンダの話をさせて戴いた。具体的には男女の平等指数(ジェンダーギャップ指数)でルワンダは女性の社会進出が上位にあることを説明した。世界で第6位ということは女性にとって幸せな国家であるはずだ。女性の議員数が60%以上を占めているのだから逆に少数派の男性議員に同情したいくらいである。

 ところがKISEKIレストランのシングルマザーたちは男たちに逃げられて不幸にも生活が維持できないので可哀そうな子供たちはごみ箱を漁っているという。ルワンダは不可解なことが多すぎるが、世銀の報告によるジニ係数(国際貧困率)でルワンダは141カ国のうち下から31番目だから極貧ではないが2006年のデータだから現在はかなり改善しているはずだ。

 何かといえば調査のデータばかりを見て貰って申し訳ないが「ルワンダの闇」を理解するには必要なデータなので我慢して頂きたい。ルワンダ人の幸福と不幸の溝を解明することで出来るだけ客観的に「ルワンダの闇」を解明したいのである。そのためにはKISEKIを経営するための矛盾や従業員に対する不信感が拭いきれない「裏の真実」について話しておかねばならない。

「フツの十戒」「ツチの19の戒律」

 正直に言えば可哀そうなシングルマザーさんは悪気があるのかないのかは分からないが、平気で店の備品や私物を「失敬」してゆくことは日常茶飯である。最大の原因は貧困であるがどうやらそれだけでもなさそうである。ルワンダには昔から「フツの十戒」や「ツチの19の戒律」という不文律が存在するらしい。これらは一種のプロパガンダ文書でありフツ族とツチ族がいがみ合うための作り話だったというのが有力な説である。

 ジェノサイド以降のカガメ大統領による改革後は改善したが昔は家庭のしつけや識字率や就学率は決して高くはなかった。「ルワンダの闇」の原点はこのあたりに潜んでいるような気がする。

 植民地主義のベルギーやフランスからすれば差別主義を温存する方が支配しやすかったのである。いわゆる愚民政策の名残はそうは簡単に消えるものではない。

 ルワンダはキリスト教国家であるから「モーセの十戒」は生きている。当然ながら「殺すな」、「犯すな」、「盗むな」、「偽証をするな」は守らなくてはならない。しかし旧宗主国(ベルギー、フランス、英国など)は彼らの人権を認めなかった。その結果、「フツの十戒」や「ツチの19の戒律」が優先されたのが「ルワンダの闇」となってルワンダ人の心を支配しているのだ。

 ここにもジェノサイドの記憶から逃げられない「ルワンダの闇」の存在がある。ベルギー人の友人は吐き捨てるように「彼らは腕や脚を切らないと従順にはなれない」と言って憚らない。我々とルワンダ人との関係は過去の歴史とは隔絶しているはずだが、「ルワンダの闇」は消えることはないと理解するしかない。殴った方は忘れていても殴られた屈辱は忘れ去ることはできないのである。このことは「嫌韓論や嫌中論」を好む一部の日本人と「反日思想」の韓国や中国の政治的思惑と似ている気がする。中国も韓国も儒教の影響が強いが近代以降は愚民主義を利用してコストを掛けずに国家を収めることを選択した。その方が手っ取り早かったのである。民度が高いとか低いとか言っても仕方のないことである。

美緒さんの悪徳大家との闘い

 近隣の比較的裕福な住人や金持ちの大家さんたちも自分たちの義務や責任は果たさず、あらゆる権利については山田家に根こそぎ要求してくるようである。国民性の違いといえばそれまでだが、権利を主張しても義務や責任は他人事である。悪徳大家は山田ファミリーを「金づる」としか考えなかったようだ。美緒さんが人の好いのを見抜いているから無理難題を吹っかけてくるのだ。端的に言えば自分たちは貧困で、日本から来た山田家は恵まれているから敵対関係を構築して理不尽な要求を突き付けても良いと信じ切っている相手である。

 基本は同じ精神構造なのだが従業員のマザー達も「気が付かなければ頂戴してもよいだろう」「気が付いて叱られたら元に戻せばよいではないか」「裕福な人から施しを受けるのは当然」といった感覚が常識になっている。むろん全員が全員そんなことはないが「料理を作っていて食材を横流しする」「今月は生活が厳しいから山田家から現金を勝手に借りてゆく(実際は返す気はない)」「自分は他人から損失を受けたのだから、同じ損失を山田家に与えてもプラスマイナスゼロだから許されて当たり前」とまあそんな感覚が普通なのである。

 罪悪感はあまりないから何時も明るくニコニコ笑っている。実に手前勝手だがそれをいちいち怒っていたらこちらの神経が壊れてゆくから、気にしないことにしていると美緒さんは笑って答えるのである。

 人の好い日本人でも常識では理解できない要求を山田一家は真剣に答えようとしている。そこには現場で一緒に働いた者だけが理解できるボランティア精神がそうさせるのかもしれない。

クラウドファンディングで夢をかなえる

 話は変わるがクラウドファンディングについてアイデアマン・サポーターのユッシーと議論をした。クラウドファンディングとは、インターネットを介して自分の夢や想いを世の中へ発信し、その活動を応援したいと思っている不特定多数の人々から少額ずつ資金を募る仕組みだがルワンダのシングルママと協力して我々日本人サポーターができることはクラウドファンディングではないかとユッシーに投げかけてみた。簡単なことではないが彼なら行動力があり何事にもめげない「夢と志」があるからだ。

 クラウドファンディングとは資金調達の方法として一般的な、融資・ローン・助成金・補助金などとは異なり、「誰でも挑戦できる手軽さ」や「返済リスクが無い安心感」、「拡散性の高さによるPR効果」などが魅力的な点としてあげられるがルワンダのボランティアを推進するには以上の要素が必要である。ルワンダの貧困の原因は先ず仕事がないことである。シングルママたちに雇用機会を与えるにしてもKISEKIレストランで25人を雇うにしても、彼女たちの後ろには何百人のシングルマザーたちが美緒さんの助けを待っているのである。


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