2022年8月13日(土)

Washington Files

2020年10月9日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

「コロナについては学校でいくら本を読んでもわからない多くのことを学んだ」

 コロナ感染して以来の上記のような大統領の一連の異常な言動の背景として、多くの医療専門家の間では、①大統領にこれまでに投与された「デキサメダゾンdexamethasone」は死亡リスク軽減、回復迅速化を目的とするステロイドであり、これまでの慣例では副作用が多いため重症者限定で使用されてきた②過去の実証例では、投与された軽症者の症状悪化が数多く報告されている③同タイプのステロイドは精神的副作用psychiatric side effectsを引き起こすことがよく知られている④具体的な副作用としては、気分の動揺mood swings、混乱confusion、侵略性aggression、焦燥感agitationが挙げられている―といったケースとの関係を指摘する声が挙がっている。

 実際に大統領の場合、入院中に「コロナについては学校でいくら本を読んでもわからない多くのことを学んだ」と発言した翌日には「コロナは大したことはない。恐れることはない」と述べ、大統領選第2回討論会について「とても楽しみだ」と意欲を見せた(5日)かと思えば、「(コロナ感染拡大を警戒した)バーチャルな討論会なんかには参加しない」(7日)と前言を翻し、いったん中止を命令したはずの追加経済対策協議に関し早期合意呼びかけ(8日)へと態度を豹変させる困惑事態が続いている。

 こうしたことを深刻に真剣に受け止めた米議会では、8日、ナンシー・ペロシ下院議長が報道陣に対し、「コロナ感染者が問題となっているステロイドを投与された場合、判断力に支障を来すとする専門家の指摘がある」と語り、急遽、大統領の精神状態と統治能力に関する特別調査委員会を立ち上げる動きにまで発展してきた。

 同議長によると、特別調査委員会の詳細については、憲法研究の専門家でもあるジェームズ・ラスキン下院議員(民主、メリーランド)とともに9日にも記者会見で説明する予定という。

 同調査委設置が確定した場合、大統領としての統治能力や判断力に重大な支障を来たした事態を想定した「憲法修正第25条」の適用が中心議題となる。修正第25条は、副大統領と閣僚の過半数または議会が大統領について「職務遂行不能」との最終判断を下した場合、大統領を本人の承諾有無にかかわらず罷免できる、と規定している。

 この動きについてトランプ大統領は同日、早速「ナンシーはクレージー。彼女こそ(精神状態の)監察を必要としている」とする反論をツイッターに書き込んだ。

 大統領のコロナ感染騒ぎの余波はさらに広がる一方だ。

  
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