2024年11月22日(金)

食の安全 常識・非常識

2012年8月9日

 でも、よく考えてみると、トクホは少なくとも安全上は問題がないのです。表示や広告宣伝も、一定の節度があります。前回も書いた通り、食べた人の体験談、個人の感想などを広告に用いることも、国から禁じられています。かなりの規制がある中で、「やり過ぎだ」と一部の委員が怒っている、という状況です。

 一方で、テレビや新聞などでさんざん宣伝されているいわゆる健康食品は、巧妙な体験談や感想の羅列ばかり。しかも、その有効性や安全性は“自称”。本当かどうかは、その企業の倫理観、責任感に委ねられています。

 消費者庁の資料によれば、トクホの市場規模は約5500億円、いわゆる健康食品は約1兆1800億円です。いわゆる健康食品は、効果効能の不当表示などにより都や県などから指導を受けるケースもしばしばあり、健康被害も時折報告されます。医薬品が含まれており、薬事法違反で逮捕される事例もあります。

 どちらの方が、問題は深刻なのか、どちらに注意を向けるべきか。言うまでもありません。だからこそ、消費者庁や都道府県は、いわゆる健康食品の指導に余念がありません。ところが、消費者委員会とマスメディアの一部は、その優先順位がおかしくなり、批判しやすいトクホを出している大企業に恣意的に矛先を向ける奇妙な「ねじれ」を起こしているように見えるのです。

 「トクホは研究や申請に金がかかるうえ、表示や宣伝の規制が非常に厳しい。こんな思いをして認可をとるよりも、いわゆる健康食品のまま、体験談を流した方がうんといいよ」

 食品メーカー社員の苦笑まじりのそんな声をいったい何回聞いたことか。悪貨が良貨を駆逐する? トクホのニュースは良きに付け悪しきに付け、今後も流れるでしょう。その時には、いわゆる健康食品の問題点も一緒に思い出してほしい。そして、トクホも誤解せずに適切に利用を。そうでないと、あなたの健康は守れません。


<参考文献>
・消費者庁・健康食品の表示制度の概要
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/syokuhin616_01.pdf
・消費者庁・食品表示のページ
http://www.caa.go.jp/foods/index4.html#m02
・公益財団法人・日本健康・栄養食品協会
http://www.jhnfa.org
・消費者委員会
http://www.cao.go.jp/consumer/index.html
・国立健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報
https://hfnet.nih.go.jp
・サントリー黒烏龍茶
http://www.suntory.co.jp/softdrink/kuro-oolong/
・キリンビバレッジメッツコーラ
http://www.beverage.co.jp/mets/cola/
・健康情報NETIBNEWS・表示規制の狭間で揺れる健康食品(15)
~トクホ『黒烏龍茶』TVCM問題で広がる波紋(1)
http://ib-kenko.jp/2012/07/15_114424_0720_dm1217_1.html
・Foocom.net・高橋久仁子さん緊急寄稿!
「あしたのジョー」を信じていい? キリンメッツコーラの問題点
http://www.foocom.net/latest-topics/
・Foocom.net/・消費者庁は、改善を求めていない~黒烏龍茶をめぐる誤報
http://www.foocom.net/column/editor/7115/

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