2024年11月22日(金)

食の安全 常識・非常識

2012年8月9日

 トクホの有効性や安全性、表示について審査する消費者委員会新開発食品調査部会は3月、会合を開いており(非公開)、審査した製品名などを伏せた議事録が後に公開されています。これを読むと、一部の委員がサントリーのテレビCMや吊り広告について「これを飲めば油ものを食べても大丈夫とか、そういう印象を受ける取り扱いになっていると思うのです」などと追及しているのです。

 メーカーの監督官庁である消費者庁は、「広告は、主観的な要素も入ってくるので判断が難しい」などと説明。「こちらの商品に限らず、特定保健用食品の広告が、『これさえ摂れば』というイメージのものが増えているという御指摘がございます。今回、当該品についてこちらから御連絡をさせていただくというところもありますけれども、改めて業界全体への周知として、特定保健用食品は食生活の補助的なもの、きっかけづくりのようなものであって、これだけを摂っていれば健康が維持増進できるような誤認を与えるべきではないという周知をさせていただくということはいかがでしょうか」と提案し、了承されています。

 こうした審議を受けて、消費者委員会事務局が「トクホの中に、TVコマーシャルや広告が不適切なものがある」と消費者庁に通知し、消費者庁がそれをそのまま、事務連絡として3月に業界団体とサントリーに伝えました。この文書は、消費者委員会のサイトで公表されており、業界団体も加盟企業に伝え、ウェブサイトでも公表しています。

3月はキリンメッツコーラCMの放送前だった

 他社のCMなどとも比較して「サントリーが特にひどい」と委員らの意見が一致したわけではないのです。消費者委員会新開発食品調査部会の会合で一部の委員が問題にした3月は、メッツコーラのCMが始まる前。「脂肪にドーン」の広告が目立っていました。インパクトがあったが故に矛先が向けられた、とも見えます。

 それに、第三者機関である消費者委員会で意見が出た、というだけで、監督官庁である消費者庁が企業に指導したわけではありません。消費者庁は、健康食品の虚偽・誇大表示の監視を行っており、悪質業者を見つけると「健康増進法違反の疑いがある」として表示の適正化を求め、そのことをウェブサイトでも公表しています。そうした事例とは、扱いがまったく異なるのです。したがって、サントリーはその後も、問題になったテレビCMをウェブサイトでそのまま、流し続けましたし、今もその一部は見られます。

 ところが、一部の報道機関が6月になってからこの話を取り上げて、「消費者庁が、サントリーに改善要請」などと誤って報じてしまったのです。

批判は「有名税」とがまんするしかない?

 このあたりが、とにかくわかりにくいのです。企業から見れば、どこまでのCMや吊り広告はよく、どこから先がダメなのか、判断基準がよく見えません。タイミング悪くCMで露出し委員の目に留まった企業だけが社名を挙げられて批判され、「監督官庁から指導を受けた」と世間に勘違いされるのでは、企業にしてみたら納得できるはずもありません。

 サントリーは、業界のリーディングカンパニーの一つでもありますから、今回の問題は一種の有名税と言えなくもありません。しかし、どの社も「明日は我が身」と感じざるを得ません。


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