2024年11月22日(金)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2020年11月2日

4年前の状況とは異なる 

 こうした中、近年、選挙分析で最も権威ある調査組織として知られる「Cook Political Report」は、投票日まであと6日を残すのみとなった28日時点の、両候補の「推定選挙人獲得数」を明らかにした。

 それによると、同日現在の分析で、バイデン候補は当選に必要な270人をはるかに上回る290人にまですでに達したのに対し、トランプ氏はいぜん125人にとどまっている。トランプ氏が再選を果たすには、残り5日間に145人を獲得する必要がある。具体的には、同日段階でいぜん「接戦状態」にあるテキサス(38人)、フロリダ(29人)、ジョージア(16人)、オハイオ(18人)、ノースカロライナ(15人)5州すべてを制するだけでなく、バイデン氏が優位に立ついくつかの主だった他州においても逆転することが絶対条件だ。

 さらに、ここに至って、一気に注目を集めたのが、選挙予想の“教祖”の呼び声高いベテラン・アナリスト、デービッド・ワッサーマン氏(「CookPoliticalReport」議会調査部長)のコメントだった。

 同氏は、2016年大統領選の際に、ほとんどの主だった世論調査がヒラリー・クリントン候補の勝利を予想、大手メディアも同調したのに対し、一人だけ「クリントン氏は総得票数で勝つが、選挙人獲得数で負ける」との最終判断を下したことで知られる。実際、ふたを開けてみると、クリントン氏は300万票以上の差でトランプ氏を上回ったが、選挙人数ではトランプ氏がミシガン、ウイスコンシン、ペンシルバニア3州を押さえた結果、「トランプ当選」という番狂わせに至った。

 しかし、そのワッサーマン氏が「今回は4年前の状況とは異なる」として、ユダヤ人社会の情報誌「JewishInsider」最近号ノインタビューで以下のような判断を示したのだ:

 「投票日まで2週間のみを残すのみとなった現時点ではっきりしていることは、疑いもなくバイデン氏が有利な立場にあるということだ。その理由は二つある。第一に、4年前、投票日直前までの世論調査でクリントン候補がトランプ氏をリードしていた時と比べ、今回のバイデン候補が保っているリード幅はボールパーク(野球場)ほどの違いがある。第二に、今回は前回と比べ、投票日直前までの『態度未定』有権者および第三政党支持者数が極めて少ない。このことは、最終段階でそれまでの投票動向がぶれたり、急変する余地がほとんどないことを意味している」

 同氏はもともと、連邦下院議員選挙の趨勢分析を専門分野としており、とくに有権者動向について、全米各州の細かな選挙区ごとにまとめた精緻な追跡調査と正確な予想は多くの専門家の間でもとくに高い評価を得てきた。2016年大統領選の時も、各州当たりわずか1000人前後のサンプル調査に頼った一般の世論調査とは異なり、勝敗の決め手となったウイスコンシン、ミシガン、ペンシルバニア3州についても、郡、町村ごとの両陣営のディテールにおよぶ有権者動向の趨勢分析の結果、「トランプ勝利」を予言していた。

 それだけに「今回、土壇場で勝敗が逆転する余地はほとんどない」とする同氏の見解は、ワシントン政界でも大きな話題となっている。

 もちろん、トランプ大統領は表向き、こうした悲観的見通しを歯牙にもかける気配はいささかも見せておらず、去る29日(木)は、フロリダ州タンパ、ノースカロライナ州ポープフィールド、30日(金)はミシガン州ウォーターフォード、ウイスコンシン州グリーンベイ、ミネソタ州ローチェスター、そして31日(土)はペンシルバニア州の4カ所の演説会場をあわただしく飛び回った。

 こうした中、CNNテレビは31日、いずれも接戦州とされるウイスコンシン、アリゾナ、ノースカロライナ、ミシガン4州の最新支持率調査結果を発表した。それによると、ウイスコンシン(バイデン52%、トランプ44%)、アリゾナ(バイデン50%、トランプ46%)、ノースカロライナ(バイデン51%、トランプ45%)、ミシガン(バイデン53%、トランプ41%)各州とも、2週間前とほとんど変わらず、いずれもバイデン氏がリードを保ち続けている。たとえば、ウイスコンシン州の場合、トランプ氏は過去1週間で4回にわたり、遊説に出かけ、支持呼びかけの演説を行ったが、リードされているバイデン氏との差はほとんど縮まっていない。

 このことは、今回、終盤で大勢が「大きく揺れ動く余地はない」とするワッサーマン氏の予言が的を得ていることを示唆している。

 それでも3日投票日、何かの奇跡が起こり、トランプ再選につながるのかどうか―。

  
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