世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2020年11月11日

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 イェール大学のロウチ教授が、10月26日付のProject Syndicateに、2008年の世界的金融危機の時と同様に、今回もコロナ危機後の経済回復で中国が米国を凌いでいる、との解説記事を書いている。

Igor Kutyaev / iStock / Getty Images Plus

 米中とも新型コロナウィルスのロックダウンで経済が収縮した。ロックダウン後第2四半期の米国のGDPは年率計算で31.2%減、第1四半期の中国のGDPの31.2%とさして変わらなかったが、第3四半期の回復で米国が35%の増加であったのに対し、中国は米国より20%上回った。

 中国は2008年の危機に際し、危機の源に対処した。すなわち世界に金融の汚染から中国市場を隔離する強力な措置をとった。今回の中国の措置も似たようなものである。すなわちまず新型コロナの感染の拡散を封じ、和らげるための強力な公衆衛生上の措置を取り、その後初めてロックダウン後の景気回復のための金融、財政策をとった。これは米国でとられた対策と大分違う。米国ではウイルスを封じ込めるためのしっかりした公衆衛生上の対策に頼るよりは、経済回復の手段として金融、財政政策を使うことが議論された。中国では米国と違って、マスク、社会的距離、積極的検査に対する政治的、社会的抵抗がない。

 ロウチ教授の解説記事は、今回の新型コロナ危機後の経済回復で、中国が米国をリードしていると言っているが、実は米国ではまだ新型コロナ危機は終息していない。そればかりか今月に入って一日当たりの感染者数が7月のピーク時を超え、第3波とも言われる現象が生じている。

 米国の感染者の総数は870万人を超え、死者は22万5千人を上回った。これは基本的に米国の感染症対策が功を奏しなかったことを表している。トランプが指導者として真剣に取り組まなかったことが大きく影響したものとも言える。

 トランプは「COVID-19はそのうち消えるだろう。ある日、奇跡のように消えるだろう」と述べ、真剣な対策に取り組む代わりに、中国に責任があると中国を批判し、WHO(世界保健機関)が中国寄りであると非難した。

 国内では、トランプ政権の対策チームの中心メンバーのファウチ博士の忠告に耳を傾けないばかりか、博士を「愚か者」と呼んで侮辱までしている。このような指導者の下で真剣な対策が取られなかったのも無理はない。

 感染対策の実施があまり経済の足を引っ張らないように配慮するのは当然であり、各国の指導者にとって、感染対策と経済活動の再開をどうバランスさせるかが大きな挑戦であった。

 米国では、感染対策が十分に行われなかった一方で、経済活動の再開に焦点が当てられ、早すぎる再開がまた感染の拡大を呼ぶという状況を生んだ。

 中国に比べて米国経済の回復が遅れているのは当然と言える。

 COVID-19は、大統領選挙の中心的争点の一つとなり、バイデンはトランプの対策を厳しく批判している。バイデンが当選すれば、遅まきながら感染対策の立て直しが行われるだろう。米国の経済の本格的な復調はそれからになるだろう。

  
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