収束のカギは?真の恐怖は?
第2に、収束はいつになるのか、その決定打は何なのか。AIが導き出したのは、トランプ大統領も感染後に治療を受けた、人工抗体による「抗体医療」と、「ワクチン」である。免疫学などの世界の知のトップにいつ収束するかを尋ねた。2021年8月~9月が4人、21年末が3人、来年のどこかの時期が2人、収束しないが1人だった。
マウント・サイナイ医科大学のフロリアン・クラマー教授は「楽観的なシナリオで、ワクチンが春までに実用化されれば、夏にはかなり落ち着く」という。
ハーバード大学医学部のダン・バルトーク教授は「ワクチンが90%の人に効く場合と、50%の人に効く場合とでは全く違う。ワクチンなしでは収束しない」。
国立感染症研究所の長谷川秀樹氏は、ワクチン開発のトップランナーといわているが、「すべての人が打てるワクチンがいつまでにできるかはわからない。安全性を重視しなければならないからだ」。
先の大阪大学の宮坂氏は「抗体医薬は、米国で第3層の治験すなわち最終段階に差し掛かっているので、ワクチンよりも実用化が早いかもしれない。ワクチンはさまざまなウイルスに対して開発されてきたが、あまりうまくいっていない」。
第3に、新型コロナウイルスの真の恐怖とはなんなのか。米国の女優、アリッサ・ミラノの投稿動画が紹介される。彼女はコロナウイルスに感染した。髪の毛をとかすと、大量の毛が落ちる。4月に感染して、ウイルスが消えても、めまい、胃の痛み、生理不順など後遺症を訴える。
世界の医師が、後遺症として100以上を挙げている。下痢、不整脈、脳卒中、幻覚――風邪では考えられない。
AIによって、研究者が注目しているキーワードは「ブレイン・フォグ(脳の霧)」である。感染者の脳のなかで、いったい何が起きているのか。
大阪市立大学医学部の倉恒弘彦・客員教授は感染患者の脳の断層写真を見ながら、次のように説明する。
「白い部分は、炎症です」
英国の研究によると、脳の中心部の記憶をつかさどる部分に炎症が起きて、認知機能が低下する。そのメカニズムはどのようなものなのだろうか。
コロナウイルスは、口から肺に入って、「ACE2」と呼ばれる突起のある細胞のその部分にとりつく。「ACE2」は、脳の中心部にも存在する。「脈絡叢」の部分である。この部分は本来、ウイルスなどが脳に侵入するのを防ぐバリアの機能を果たす。しかし、コロナウイルスは「ACE2」にとりついて、バリアを壊す。思考力を失わせる。
風邪ウイルスは、呼吸器官に症状をあらわす。しかし、「ACE2」は腎臓や血管、心臓などさまざまな臓器につまり全身に存在する。100以上の全身症状がでる原因である。
ただの風邪とは、まったく異なるコロナウイルスの「脅威」である。
イエール大学医学部の岩崎明子教授は、米国において30年以上も研究を続ける免疫学者である。「ブレイン・フォグ(脳の霧)」の提唱者でもある。
コロナ死の3人のうち1人の脳に感染があったことを明らかにする。
「脳の霧」の原因はなにか。岩崎教授によると、ウイルスによる直接感染と、免疫の暴走(過剰反応)のふたつが考えられるという。
後遺症が長く続く人にはどのような特徴があるのか。岩崎教授によると、80%が女性であり、平均年齢は44歳だという。重症者が高齢者に多いのとは対照的である。女性に多いリュウマチなどの「自己免疫疾患」が影響しているのではないか、とみている。
「若くて、アスレチックだとしても安心できない。症状が続く」と。