田部康喜のTV読本

2020年11月14日

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田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

(Ca-ssis/gettyimages)

 NHKスペシャル「新型コロナ 全論文解読~AIで迫る いま知りたいこと~」(11月8日)は、AIが世界の論文20万本以上を読み解き、新型コロウイルスに対する科学者たちの戦いを描いている。日本の冬に感染は拡大するのだろうか。収束はいつになるのか、その決定打はなんなのか。このウイルスの真の恐怖とは。“究極”の対策とは何か。

 「正しく恐れる」――新型コロナウイルスの感染が広がり始めた当初から、繰り返し述べられてきた言葉をはっきりと実感させる、力作である。本シリーズの執筆に心がけている評論的な視点をあえて避けて、番組の内容をできるだけ忠実にかついつものページを超えてご紹介したい。

 第1に、日本の冬に欧州のような感染拡大は起こるのだろうか。冬場の感染について、AIが抽出した論文は350本以上だった。キーワードの1位は「気温」、2位は「湿度」、第3位は「ビタミンそれもビタミンD」である。最後から述べると、ビタミンDは免疫力を高める効果があるという研究結果である。

 気温と湿度の関係をみると、ウイルスの生存時間は「35℃-60%(夏場に相当)」なら2時間で死ぬが、「24℃―20%(秋口に相当)」なら15時間もかかる。冬にかけては、感染リスクが高まる。予測研究の権威である、マーク・リプシッチ教授は「日本でもこの冬、予測は困難ではあるが、春と夏の対策では十分ではなく、冬に感染が急増する可能性はありうる」と警告する。

 日本をはじめとするアジア諸国と欧米を比較した場合、新型コロナによる死亡率の差に注目が集まる。人口100万人当たりで、日本が13人、韓国が9人、マレーシアが6人、ベトナムが0.4人であるのに対して、欧米は500人をはるかに超える国々が多い。

 死亡者を押さえ込む要因として、AIが抽出したキーワードが「交差免疫」である。新型コロナウイルスではない、季節性のウイルスに感染していた場合に新型コロナに対してもある程度の免疫が働くのではないか、という推定である。

 新型コロナウイルスに感染した患者のなかで、過去に別のウイルスに感染しなかった人の重症化率は28.1%であったのに対して、感染した人は4.8%だった。ボストン大学医学部のマニッシュ・サガール教授は「季節性ウイルスの感染があれば、重症化が国によって差が出るのは、交差免疫による」と語る。

 日本人50人の血液分析によると、75%の人に交差免疫があった。東京大学先端科学技術センターの児玉龍彦・名誉教授は「(日本人は)交差免疫によって、コロナウイルスに感染しても中軽症にとどまっている可能性がある」と指摘している。

 AIが抽出した、マスクに関する論文は驚くべきものだ。予防手段と考えられているマスクが、免疫力を向上させる効果もあるのではないか、という研究である。

 米国の病院において、スタッフの感染の広がりをみた。マスクを着用していた37人のうち、3週間で13人が感染したが、症状がでたのは1人で残り12人は無症状だった。全員がコロナウイルスに対する免疫を獲得した。マスクをしていると、ウイルスの量が少ないので抗体も少ししかできないが、微量で感染が続き抗体が知らぬ間に増えるのではないか、と考えられている。

 マスクなしでは、抗体を獲得した人は20%に過ぎなかったが、上記のようにマスクをした人は92.3%が抗体を獲得した。実に3倍である。

 ただ、大阪大学免疫学フロンティア研究センターの免疫学の権威である、宮坂昌之氏は次のように述べる。

 「交差免疫が重症化を食い止めているとはいえる。科学的に証明はまだできていない。新型コロナにかなりにくい遺伝子がある、とも推測されていがまだはっきりとしない。マスクについても、米国では来年2月までにマスクをしないと50万人が死ぬと推定され、マスクによって13万人の死亡者が減らせるともいわれている。しかし、マスクがウイルスを吸い込む量を減らすのかは、まだわかっていない」

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