2024年12月23日(月)

渡辺将人の「アメリカを読む」

2012年8月16日

 アメリカ大統領選挙の共和党候補ミット・ロムニー氏が、副大統領候補に下院予算委員会委員長のポール・ライアン氏を選んだ。前回(「ロムニーはオバマに勝利できるか?センス問われる副大統領候補者選び」)で紹介したように、保守系コラムニストのジョン・ギジ氏は、「ロムニーとは違うバックグラウンドのより若い誰かと組むのではないか。例えば、ポール・ライアン下院議員、マルコ・ルビオ上院議員、そして注目しておかねばならないのは、ニューメキシコ州のスザナ・マルチネス知事だ」と述べ、春先からライアンの可能性を指摘していた。

 結果ロムニーは、ヒスパニック系カードや女性カード(ルビオやマルチネス)を切るギャンブルには打って出なかった。しかしライアンについては、ギジ氏は2008年のペイリンに次いで見事に予想を的中させた格好だ。

本命視されていたポートマンを出し抜いた若手ライアン

 ギジはライアンを「ライアンはとてつもなく賢い。意見で対立している人ですらライアンのことは尊敬する。それは新しいアイデアを大切にするからだ」と好意的に評する。

 ウィスコンシン州選出のライアン氏は42歳である。ギジは、ロムニーは自分より若い人を選ぶのではとして、ライアンの年齢に目をつけていた。ケネディやクリントンなど40代で大統領選挙の大舞台に出て成功した人物は過去にいくらでもいる。しかし、ライアンは1970年生まれだ。ジェネレーション的に30代以降は共感の射程範囲内の若さである。1975年生まれの私から見ても、共和党の若返り戦術としては一定の効果がありそうに思える。

 また、ライアンはカトリック教徒として、モルモン教徒のロムニーと組む。正副に1人もプロテスタント教徒がいない共和党の組み合わせも、可能性として十分あることをライアンの名を挙げて前回に指摘した通りだ。

 ロムニー陣営の脳裏にあったのは、候補者自身が深く知りもしないペイリンを選んで選挙戦を混迷に陥らせた2008年マケイン陣営の過去トラウマだった。そのため「安全な候補」(Safe Choice)を選ぶのではないかというのが、米政界の玄人筋の見方だった。筆頭にあがっていたのは、オハイオ州選出上院議員のロブ・ポートマンだった。ロムニーとポートマンの人間関係の良さは広く知られるところで、共和党予備選における、オハイオ州のロムニー勝利にも、ポートマンは大きく貢献していた。

 また、2011年アイオワ模擬投票でいち早く撤退してしまったティム・ポーレンティ元ミネソタ州知事の変わり身の早さも象徴的であり、下馬評にあがっていた。なるほど、ニューハンプシャー州など主要州の予備選イベントの前座演説はポーレンティが務めることが多かった。ロムニー政権のポストに色気があるのは一目瞭然だ。いずれにせよ、共和党の副大統領候補は「白人・男性・(地盤が)中西部」というのが共和・民主に共通する玄人筋の予測であった。


新着記事

»もっと見る