2024年11月22日(金)

渡辺将人の「アメリカを読む」

2012年8月16日

 ロムニーはリベラル系政治誌『The American Prospect』(2012年6月号)で、ジェメール・ブーイが述べるところの「急進的右派の召使い」に自らを縛る道を選んだのだろうか。現在の共和党の保守団結の道は、社会政策にも、安保外交政策にもない。共和党にも同性愛者はいるし、リバタリアンは人工妊娠中絶の権利には賛成だったりする。また、ポール派を中心にイラン攻撃は言うまでもなく、制裁にすら抵抗する勢力も抱えている。ただ1つ「反オバマ」で繋がれるのは、反医療保険、反「大きな政府」の経済保守路線だ。

 かつてギングリッチ元下院議長が発表した「アメリカとの契約」に比べると知名度もインパクトも薄いが、共和党は2010年9月に「アメリカへの誓約(A Pledge to America)」という綱領を打ち出している。ライアンも中心人物として作成に関与した。冒頭項目を概観すると、1:雇用創出、経済的不安定を食い止め、アメリカの競争力を高める、2:制御不能な支出を止め「小さな政府」実現、3:医療保険改革廃止、4:連邦議会改革と信頼回復、5:アメリカの国内外の安全保障維持、となっている。

 経済保守的アジェンダ一辺倒であり、社会保守が求める人工妊娠中絶、同性愛の問題などが消えている。外交は5番目に抽象的に言及されているのみだ。「小さな政府」に特化して、経済で保守団結を狙う路線が鮮明だったが、ロムニー陣営はこの流れに歩調を合わせる道を選んだ。

 ライアンは歳出増大や医療保険改革は過ちであり「雇用停滞は増税のせいだ」という論理を貫いている。ライアンは、10年間で6兆2000億ドルの歳出削減を目指す共和党予算案で、オバマ大統領に楯突いてきた。医療保険改革見直し、メディアケア民営化なども柱としている。財政保守強硬派のライアンを民主党は、どう見ているのだろうか。オバマ陣営はどう迎え撃つのだろうか。次回以降で言及していきたい。

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