2024年11月24日(日)

使えない上司・使えない部下

2020年12月18日

挑戦する機会を作ることを忘れないで欲しい

上田玲奈さん

 在宅勤務には、双方で誤解を招きやすい一面があります。私たちは、メンバー間で意思疎通を図る場合、視覚による情報がほとんどないのです。音声だけで連絡を取り、仕事を進めます。だから、ふだんからのコミュニケーションがとても大切です。パワハラやセクハラなどハラスメントが世の中で問題になっていますね。私は、その多くは双方のコミュニケーションが足りないように思います。

 実は、私自身、どうしたらいいのかわからなくなる時があります。メンバーの言葉を聞いた時、本音はどうなんだろうとよく考えるようになりました。言葉の節々に、その人の本音が隠れている気がします。悪い職業病のようですね…(苦笑)。

 かつての私もでしたが、障がい者の社員は仕事に自信がない人が多いのです。実際は、担当する仕事をきちんとできるのですが、「自分にはできない」とあきらめてしまう場合があるのです。そんな姿を見聞きすると、もったいないとよく思います。考え方を少し変えるだけで、できることはたくさんあるのです。みんなのモチベーションをどのようにして上げるか。そこが、腕の見せ所ですね。

 例えば、メンバーが「この仕事をやりたい」と思っているようなのですが、「自分ではできない」と感じている空気を私が察したとします。その場合は、どうして自信がないのか、と聞くようにします。何が引っかかっているのかを尋ねて、本来持っている力をなんとか引き出せるようにしたい。「この仕事をやりたい」とは思っていない時もあるでしょうから、その場合はそっとしておきます。こういうことは、信頼関係がないとできませんね。

 私が明るい雰囲気? そうですか…。落ち込む時はありますが、表には出さないようにしているのです。暗いままでは、みんなが暗くなってしまうでしょう。はつらつとしていると、メンバーを引っ張っていくことができる気がするのです。チームをまとめることを深く考えすぎて、崩れてしまいそうになる時はあります。あるところで考えるのを止めないと、自分の中で情報過多になるのです。頭の整理を一旦して、悶々とした思いを払いのけて再スタートするようにしています。

 今に至るまで、メンバーへの接し方や仕事の依頼の仕方、チームのまとめ方などで完全に満足をしたことはありません。いつも発展途上。唯一の正解がないから、よりよきものを求めて私の考えが変わり続けるのです。「すべてうまくいった。これが一番よかった」と思うのは、自らの成長をあきらめた時でしょうね。限られた労働時間の中でどれだけがんばることができるか。

 このあたりは、健常者の社員よりも厳しく、難しいものがあるのかもしれません。障がい者は仕事をすると、健常者よりは心身に負担がかかりやすいのです。メンバーのみんなはどこまでが大丈夫で、どこからがよくないのか…。このボーダーラインは、チームをまとめる私にとって常に考えることであり、謎なのです。メンバーが本当に思っていることや感じていることを確かめるようにしていますが、チームをまとめる立場としての対応は難しく、迷うところです。

 印象に残っている上司? 反面教師としてですが、前職(従業員数100人程)での上司です。50代半ばで、課長の方でした。当時も車椅子に乗っていたのですが、担当する仕事がなかった時期がありました。上司に「仕事がないのですが、どうしたらよいですか」と尋ねたら、「周りの人に仕事はないですか? と聞いて回りなさい」と言われました。社会人になって日が浅かったから、こういうものなのかなと思っていました。今考えると、あり得ないですね。

 いい意味で印象に強いのは、現在の会社に入社した7年前の頃の上司です。当時50代前半から半ばで、役職は本部長。私が役職で呼んだところ、「苗字で呼んでください。役職で生きているわけじゃないから…」と話していました。「1人の人として見てほしい」「上司ではあるけれど、間違った指示をしたりする場合がある。自分の言うことが全部正しいわけでもない。誤りがあったら、遠慮せずに言ってほしい」…。こんなことを言われました。実際にその通りに行動をしているように私には見えます。恰好いいなと思いました。

 社外に目を向けると、障がい者と働く時に、障害の部分に触れないようにしようとしている人がいます。腫れ物に触るかのような感じに見えます。その思いは私なりにわかるつもりですが、障害の部位や程度を始め、心身の状態を聞くことには気を使わないほうがいいと思います。聞かないと、きっとわからないでしょう。障がい者が会社に伝えようという思いも必要です。本人と会社の双方の思いが大切なのでしょうね。

 「障がい者だから…」と特別扱いすると、お互いに溝ができる場合があります。障害に対する配慮はしてほしいのですが、その仕事をできる可能性があるならば、挑戦する機会を作ることを忘れないで欲しいですね。

 社会が配慮すべきところも多々ありますが、障がい者が積極的に社会と融合するように心掛けない限り、社会環境のバリアフリー化の実現は難しいと私は思っています。

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