2023年1月27日(金)

Washington Files

2020年12月28日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

「トランピズム」から抜け出せるか 

 今後最大の関心は、共和党の対トランプ隷属関係がいつまで続くかにある。もし、トランプ大統領が来月20日、ホワイトハウスを離れたのちも同党が「Trumpism(トランプ教)」の呪縛から解き放されないとすれば、共和党の将来は惨憺たる状況になりかねない。なぜなら、「Trumpism」の実体は、未来志向型の都会および都市近郊居住の白人中産階級、そして黒人、ヒスパニックなどのマイノリティ有権者層に背を向け、主として成長の見込みのない「ラストベルト(錆びついた工業地帯)」やグローバル競争から完全に取り残された高卒以下の低学歴白人労働者の狂信的支持に支えられているからにほかならない。

 しかも、偏狂思想で固められた時代遅れの「Trumpism」は、建党以来の共和党の伝統とはおよそ似てもつかないものだ。

 トランプ大統領は今回の選挙期間終盤に入り、劣勢挽回策の一環として、米国史上最も偉大な大統領の一人として知られるリンカーン大統領(共和党)の記念堂テラスに自ら陣取り、30分近くにわたり報道陣を前に熱弁を振るった。

 しかし、黒人奴隷解放のために政治生命を賭して戦ったリンカーン大統領に自らのイメージをかぶせて偉大さを誇るという浅薄で高邁な態度に、民主党のみならず共和党支持者の間でも失笑が渦巻いたほどだった。

 共和党と言えば近年、「保守主義、軍事力重視、自由競争重視、『スモール・ガバメント(小さな政府)』志向、中西部および南部を基盤とする白人中心主義」のイメージが定着してきたが、1861年リンカーン共和党大統領誕生当時は、「リベラル志向、人種平等主義、『「ビッグ・ガバメント』支持、北東部工業諸州傾倒」を特徴とする政党だった。民主党はその逆で「保守、南部および中西部重視、人種差別主義」の政党だった。そして共和党はこうした都会重視型の政策を推進することにより支持基盤を拡大し続け、19世紀後半にかけて民主党を圧倒する大政党に成長した経緯がある。

 しかし、その共和党はそれから1世紀半を経て今や「トランピズム」の奴隷となり、偏狭な農村、“煙突産業”重視型の政党にまでなり下がってしまった。

 同党が近い将来、幅広い国民支持層に支えられた本来の「ビッグ・テントの党」に立ち返ることができるかどうかは、一にいかに早く「トランピズム」から抜け出せるかどうかにかかっていると言えよう。

  
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