Wedge REPORT

2021年1月27日

»著者プロフィール
著者
閉じる

庄司昌彦 (しょうじ・まさひこ)

武蔵大学社会学部 メディア社会学科教授

1976年、東京都生まれ。中央大学大学院総合政策研究科博士前期課程修了、修士(総合政策)。19年より現職。国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)主幹研究員を兼務。専門は情報社会学、地域情報化、電子行政など。
 

 「IT革命」が流行語大賞を受賞した2000年以来の、大きな改革がIT分野で行われる。21年の通常国会では、約20年前に作られた「IT基本法」およびその関連法の改正や立法が予定されており、21年9月には「デジタル庁」が500人規模で発足する。このために菅政権は発足直後から複数の有識者会議を立ち上げ、急ピッチで議論を進めてきた。20年末には「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」と「デジタル・ガバメント実行計画」を閣議決定し、「データ戦略タスクフォース第一次とりまとめ」を公表した。

緊急事態宣言下(2020年5月)にも関わらず、証明書の発行やマイナンバーカード申請等で混雑する市役所窓口 (THE MAINICHI NEWSPAPERS/AFLO)

 この改革のきっかけは、特別定額給付金制度などの新型コロナウイルス対応でIT活用に苦戦したことにある。

 それだけではない。これからの人口減少社会では、住民の超高齢化にともなって増え続ける福祉等の行政ニーズに対し、現在より少ない人員や予算で対応していかなければならない。

 これらの問題はデジタル化によってオンライン化、自動化、データ活用等によるデジタルトランスフォーメーションを進めれば、解決していくことができるだろう。また、社会的な課題だけでなく、国民一人ひとりにとっても、対面手続きによる感染リスクや窓口へ行く手間や身体的負担の軽減、さらに、データ活用によって自分に合ったサービスを受けられるようになるメリットがある。結果として、欧米諸国や中国、新興国などが繰り広げているIT分野での世界競争に日本もキャッチアップしていくことができるだろう。

 政府は、各省庁の縦割りで作られてきた情報システムの基盤をクラウド上に統合する。25年までには、地方自治体の主要17業務(住民記録、地方税、介護保険など)のシステムも標準化・共通化されてこの基盤に乗ることになる。こうしたシステム統合やデータ連携の強化を軸として、政府は社会全体のデジタル化を加速させる狙いだ。

 しかし、デジタル庁という〝ハコ〟を用意したからといって、デジタル改革が進むとは限らない。そもそも、「政府が横断的な組織を作り強力に進める」という名目の下で実施されるデジタル改革は今回が初めてではない。IT基本法で設置されたIT戦略本部の活動や、政府CIO(最高情報責任者)を任命し、IT戦略本部をIT「総合」戦略本部に衣替えした13年の体制強化でも、同じようなことを謳ってきた。

 ところが結局、今回の新型コロナ対応で「デジタル敗戦」という結果を招いてしまった。政府・自治体は、これまでの反省と教訓の上に立ち、今回こそは失敗を繰り返さぬよう、改革を進める必要がある。その上で参考となりうるのが、「マイナンバーカード普及」と「クラスター対策における民間データ活用」での政府の対応と、それに対する国民や民間企業の反応である。

関連記事

新着記事

»もっと見る