Wedge REPORT

2020年5月29日

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(出所)各種報道等を基にウェッジ作成 写真を拡大

 新型コロナウイルス感染拡大防止を目的とした個人データの利用が各国で進む。中国や韓国、台湾などでは、感染者のスマートフォンの位置情報や健康情報が活用されている。米アップルと米グーグルは4月上旬、スマホの「ブルートゥース機能」を利用し、感染者との濃厚接触を検知するシステムを世界各国に共同で提供すると発表した。

 日本政府も4月上旬、官民合同のテックチームを発足させITやデータを活用した対策に乗り出した。利用者のスマホ端末に残された接触履歴を基に、感染者が判明した際に濃厚接触者に通知がいくアプリの開発を目指す。接触の記録は個人が特定されない識別子の形で端末に保存され、感染者がアプリ上で感染確認の入力をすると、過去に感染者との接触記録を持つ端末ユーザーに通知される仕組みに決まった。

 個人情報保護委員会は5月1日、今回の通知アプリ導入に関する見解を示し、利用目的を利用者に適切に説明したうえで、利用後のデータ消去、問い合わせ体制の確立といった安全管理に配慮すべきとした。

 果たして国民の理解と信頼を得て、アプリの利用は広まるのだろうか。

 官民データ連携の方針を策定する内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室の担当者は「国民の理解とのバランスを考慮しながら、民間企業の協力を得て、より多くのデータを活用していきたい」と述べる。

 一方、今春、国が民間企業に対して利用者データの提供を求めた際に、「個人情報」を巡る両者の認識の大きな隔たりが顕在化し、すったもんだがあった。

国に透明性を求めたヤフー
匿名データに潜む落とし穴

 ヤフーの関係者によると、3月上旬に厚労省から同社に利用者データの提供の相談があったという。「新型コロナのクラスター対策のためにデータ提供の依頼があったが、『使えそうなデータがあれば何でも欲しい。統計データという形をとれば法律上も問題ないはずだ』といった曖昧な内容だった」といい、社内では趣旨には賛同するがリスクが高すぎるとの声が上がった。

 個人情報保護法では、匿名データや統計データなど、個人が特定されない情報は個人情報に該当せず、第三者への提供に関しても本人の同意を必要としない。厚労省からしてみると、法律に抵触しないのだから、こうしたデータの提供を受けても何ら問題はないという認識だったようだ。

 一方、ヤフーに限らず、民間企業にとって顧客情報の取り扱いには、たとえ匿名であっても細心の注意を払っており、行政機関の認識とは大きな乖離(かいり)がある。

 というのも、日本企業は幾度となく顧客情報の扱いを巡り世間から批判を浴びてきたからだ。交通系ICカードの移動履歴やスマホアプリの位置情報についても、匿名化されており法律には抵触しなくても利用者があずかり知らないところで第三者に提供したことが問題視され、企業の信用を落としてきた。

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