2022年7月5日(火)

Wedge REPORT

2020年5月29日

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 ヤフーは協定締結から1週間後の4月20日に約100万人分の統計データの分析結果について厚労省への提供を開始した。しかし、厚労省クラスター対策班によれば、ヤフーから提供されたデータに基づく感染症対策成果の公表時期について、5月7日時点では未定だという。LINEアンケートの分析結果についてはすでに厚労省、LINE双方のHPで公開されているが、アンケート結果に基づき、どのようなクラスター対策がとられたかについては不明だ。

現行法の見直しも視野に
第三者によるチェック体制を

 前述した国から民間企業に対して出された要請文では、今後追加的にデータ提供を要請する場合、個人情報保護法で定める「例外規定」を適用する可能性があるとしている。どういうことか。個人情報保護法23条では、あらかじめ本人の同意を得ずに個人情報を第三者に提供することは原則禁止されているが、いくつか例外規定が設けられている。例えば、公衆衛生の向上を目的とした場合や国の機関が法令の定める事務を遂行する場合で、災害時など本人同意を得ることが困難であるときだ。

 政府は今後の感染拡大状況に応じて、個人が特定される情報についても、この例外規定を適用して民間事業者へ提供を要請することを示唆する。しかし今回、匿名の統計データですらその取り扱いに関して民間企業との認識のずれが露呈した中、そのギャップを埋め、個人情報の保護と公益のバランスをとる方策はあるのだろうか。

 東京大学大学院法学政治学研究科の宍戸常寿教授は「行政機関におけるデータの取り扱いについて、透明性が確保されているかをチェックする第三者機関を設置すべきだ。民間企業を監督する立場にある個人情報保護委員会に、行政機関を監督する権限を付与することで、ガバナンスを強化することができる」と指摘する。

 すでにそうした動きは出てきている。3月上旬、政府内で開催された「個人情報保護制度の見直しに関する検討会」では、民間企業と行政機関で異なる個人情報保護法を一元化し、個人情報保護委員会の所管とする案が出された。しかし、具体的な制度設計については定まっておらず、今後さらなる議論が必要だ。

 日本全体の公益に資するデータ活用を円滑に進めていくためは、政府自らがその有効性をしっかりと伝え、その必要性について十分に国民の理解を得ることで、われわれが納得してデータを提供できる仕組みづくりが重要だ。

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■コロナ後の新常態 危機を好機に変えるカギ
Part 1      コロナリスクを国有化する欧米 日本は大恐慌を乗り切れるのか?
Part 2      パンデミックで見直される経済安保 新たな資本主義モデルの構築を
Part 3      コロナ大恐慌の突破策「岩盤規制」をぶっ壊せ!
Part 4      個人情報を巡る官民の溝 ビッグデータの公益利用は進むか?
PART 5-1 大学のグローバル競争は一層激化 ITとリアルを融合し教育に変革を
PART 5-2 顕在化する自治体間の「教育格差」 オンライン授業の先行モデルに倣え
コロナ後に見直すべき日本の感染症対策の弱点
Part 1      長期化避けられぬコロナとの闘い ガバナンスとリスコミの改善を急げ
Part 2      感染症ベッド数が地域で偏在 自由な病院経営が生んだ副作用
Part 3      隠れた医師不足問題 行政医が日本で育たない理由

  
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◆Wedge2020年6月号より

 

 

 

 

 

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