2022年12月8日(木)

サムライ弁護士の一刀両断

2021年3月5日

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河本秀介 (かわもと・しゅうすけ)

弁護士

敬和綜合法律事務所所属。東京大学卒業後、三菱重工業での勤務経験を経て、2007年に弁護士登録。以後、会社関係訴訟、企業経営への助言、株主総会指導、M&Aアドバイスなど、コーポレート分野を中心に、幅広い内容の業務を遂行している。

発信者情報開示のための新しい手続

 これらの課題に対し、この度国会に提出された改正法案では、発信者情報開示を請求するための新しい裁判手続の設置が予定されています。

 現在、発信者情報開示を裁判手続で求める場合には、IPアドレスなどの保存期間の短い情報については「仮処分」という簡易な手続を取り、住所、氏名、メールアドレス、電話番号など、基本的に無期限に保存される情報については、通常の訴訟手続を取るのがセオリーです。裁判所が「消えてしまう心配の少ない情報については訴訟で慎重に判断しなさい」という方針を取っているからです。

 仮処分の場合は1、2カ月で結論が出ることが多いのに対し、訴訟は判決まで半年から1年ほど(場合によってはそれ以上)かかります。

 これに対して改正法案では、発信者情報開示のための手続として、仮処分とも訴訟とも異なる第3の裁判手続が設けられるとされています。

 法改正による新しい手続は、訴訟よりも簡易な、「仮処分」寄りの方法で審理されることが予定されていますので、よりスムーズな判断がされることが期待されます。

多段階の手続の手間が緩和

 また、新しい裁判手続では、複数回の手続を取る手間を緩和する措置が設けられています。

 新しい手続では、開示を認めるかどうかを最終的に判断する前であっても、裁判所が必要と判断した場合には、コンテンツ事業者等に対し、発信者が使用したアクセスプロバイダ等に関する情報提供を命じることができるとされています。

 手続の途中にアクセスプロバイダに関する情報提供がされた場合、従前段階的に行ってきた複数の手続を同時並行的に行うことが可能になり、手間や時間が緩和されることが期待できます。

「ログイン時情報」が開示対象に

 さらに、改正法が成立した場合、誹謗中傷にあたる記事を投稿した時のアクセス情報だけでなく、SNS等のサイトにログインした時のアクセス情報を開示の対象とすることができるようになる見込みです。

 発信者情報開示請求の対象とされてきたのは、基本的には記事を投稿した時点の情報です。これに対して、投稿時のアクセス情報は保存期間が短く、もとからログが保存されていないこともあるため、発信者がログインした時点でのアクセス情報の開示を求めることができないかが議論になっていました。

 現行法では、ログイン時情報が発信者情報開示の対象となるかは条文からは明らかでなく、裁判例も開示を認めるものと認めないもので分かれていました。

 法改正の後は、一定の場合に、ログイン時情報が開示の対象となることが条文に明記される見込みですので、「投稿時のログが残っていない」「そもそも投稿時のログを残さない」という事業者に対しても、ログイン時のアクセス情報の開示を求めることができるようになる見込みです。

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