2024年12月22日(日)

サムライ弁護士の一刀両断

2020年5月21日

 新型コロナウィルスの問題は、緊急事態宣言が解除されつつある動きもありますが、依然として自粛が続いている状況です。

 今後、緊急事態宣言が解除された場合であっても、引き続き感染拡大防止に配慮する必要があることには変わりないでしょう。厚生労働省が、身体的距離の確保、マスクの着用、手洗いや、「三密」の回避などを内容とする、「新しい生活様式」を公表したことは記憶に新しいところです。

 そんな中、今年も株主総会のシーズンが近づいてきました。わが国では上場企業の定時株主総会は6月下旬に開催日が集中しています。

 新型コロナによる「新しい生活様式」の下で株主総会を開催する場合、どういった配慮が必要なのでしょうか。

(DIPA/gettyimages)

企業経営にダメージとなる株主総会でのクラスタ発生リスク

 株主総会は株式会社の経営の基本方針や重要な決定を行う場です。同時に、株主にとっては株主としての権利を行使する場であり、株主と会社との対話の場でもあります。

 そのため、多くの企業では株主総会のためにホールなどを貸し切り、大勢の株主に出席してもらったうえで、株主との間で活発な質疑応答を交えて株主総会を進行していました。

 しかし、このようなスタイルの株主総会は、多かれ少なかれ、新型コロナの感染拡大防止のため回避すべき「密閉、密集、密接」の三密にあたってしまいます。

 万が一、株主総会がクラスタ発生の場となってしまった場合、株主や役員などの出席者の健康の問題はもちろんのこと、企業のイメージダウンにもつながりかねません。企業にとって、いかに新型コロナの感染拡大を防ぎつつ株主総会を開催するのかは、悩ましい問題でしょう。

総会自体を延期することも選択肢ではあるものの

 ひとつには、新型コロナの感染拡大防止のため定時総会自体の開催を延期するという選択肢も現実的にありえます。

 多くの会社では、定時総会の開催日について、「事業年度の末日から一定期間以内に定時株主総会を開催しなければならない」などと定款で定めています。これについては、法務省が、新型コロナの問題で開催が不可能と判断される場合には、定款で定めた開催期限を超えて延期することが可能だとする見解を公表しています。

 もっとも、株主総会が開催されない場合には、総会で決議すべき事項の決定ができません。たとえば、役員の交替を予定しているような場合には新しい役員が選任できませんし、予定された配当が遅れることに株主が不満を持つことも考えられます。

 新型コロナの問題がいつ解消されるのかも不透明なことも考えると、なるべく先延ばしにすることなく、例年通りの日程で株主総会を開催するのが会社の経営コスト面でも望ましいでしょう。

来場の自粛を求めることも「可能」

 それでは、新型コロナの影響下で株主総会を開催する場合、どのようなことに配慮する必要があるのでしょうか。

 株主総会でクラスタが発生するリスクを考えると、「三密」をなるべく解消した方法で開催する必要があります。

 これに関しては経済産業省がQ&Aを公表しており、新型コロナの感染拡大防止を理由とする場合には、「株主に来場を控えるよう呼びかけること」「会場への入場制限」「会場に株主が出席していない状態での開催」「株主総会の開催時間の短縮」などについて、いずれも「可能」とする見解を公表しました。

 これまで、株主総会はなるべく多くの株主が参加し、会社と株主が活発に議論を交わすのが良しとされてきましたので、株主に来場の自粛を呼びかけることが「可能」とする見解を官公庁が示したのはなかなか衝撃的です。


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