2022年12月7日(水)

使えない上司・使えない部下

2021年4月2日

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上司は部下に対し、多少弱いところを見せて欲しい

緑川陽子さん

 建築会社に移り、営業を担当し、契約をどんどんと取るようになりました。ヤクルトレディやクッキングスタジオで学んだことが活きてきました。毎朝5時に起きて、娘たちの朝食やお弁当、子どもたちが帰ってからの夕食を作ります。定時以降にいったん帰宅し、子どもの面倒をみた後、会社に向かい、遅くまで仕事をする。遅い日は、深夜1時に帰宅するぐらい。それでも娘のバスケットの試合には、必ず観に行くようにしていました。

 二級建築士の資格試験に合格するために午前7時半に出社し、勉強も続けました。営業は、ノルマがあるからストレスがあります。だからといって、夫の稼ぎで生きていこうとは思いませんでした。

 周囲の男性社員で契約がとれない人は、出社時間ギリギリ。身だしなみもできていない。家に帰れば、きっと奥様が作った晩御飯があり、お風呂も沸かしてあるんだろうと思っていました。「私の代わりに家の食事を作ってくれれば、代わりに営業で契約をとってくるよ」と言いたかった。少なくとも私よりは時間はあるでしょうから。男の人は楽だな、と感じました。私の方が売ってやると、がんばっていました。

 36歳で総合住宅展示場の営業所長に選ばれました。部下が5人。20代の女性が3人で、年上の男性が2人。この男性たちが私よりもキャリアがありながら、なぜこんなに契約が取れないのか、当初はわからなかったのです。年下の上司で、しかも女。やりづらいだろうけど、私もやりづらかった。4年程で辞めたのですが、管理職に向いてないと思いました。自分で営業してその成績をみんなに振り分ける。年上の男性社員の成績をよくしようとしたんですが、自分の給料が下がるのです。部下の年収とほぼ同じ。

 この頃、年上の男性社員のことを「使えない」と見たことはあります。会社を経営する立場となり、その思いを持つことはなくなりました。会社員の頃は、「自分基準」で考えていたように思います。視野が狭かったのかもしれませんね。人を雇う側になって、随分と考えが変わりました。そのような立場になってみないと、わからないのだなと思います。

 退職を申し出たところ、役員からずいぶんと引き止められました。女の管理職が少なかったから、新卒の会社案内で私のことが紹介されていました。「仕事と家庭両立しています」といった感じで。会社が勝手にそんな具合にしたようでした。「いや、家庭は崩壊しているよ」と思っていましたが…。広告塔のような役割の女がいなくなることに困ったのかもしれませんね。

 離婚の女性を対象にした不動産会社にしたのは、お客さんの数は少なくなるかもしれませんが、来てくだったらきっとお役に立てることが多いと感じたから。今までのお客さんの大半が、女性。離婚前の段階が多い。かつての私よりも苦しんでいる人もいます。例えば、夫のDVや浮気。私は、そのような経験はない。ある意味で、円満離婚でしたから…。離婚を推奨しているわけではないですよ。私のように仕事ができる人が多いわけではないでしょうから。悩みを相談しているうちに、泣き出す人もいます。 

 初期の頃は、夫に対する反骨心。今に見ていろよっ…て。それがある時期から、男性全体に変わった。「アベリア」を作った時、自立した女になり、家を買えるぐらいのことができる。1人で生きていくことができる。悩んでいる人に、そんな提言をしたかったのです。現時点で、そのような生活ができている自分が幸せかと言えば、そうでもないかもしれない。反骨心や思い込みがなくなったので、当初自分が一番ないと思っていた生活=再婚や男性の収入で生きていく、という生き方もありだなと感じています。

 あの頃、なぜ、与えられた仕事ができただけであんなに自信をもっていたんだろうとも思います。会社を経営する立場になり、ゼロから仕事を作り出すことはこんなに大変だったんだなとつくづく感じています。集客は、究極最高に難しい。会社のお金で集客してもらって、それで来たお客さんに契約を取っていただいただけで、なぜ、あんなに粋がっていたんだろう。

 かつて完璧な上司を目指していたから、部下も大変だったんだろうなと思います。弱みを見せたら、常に誰かに食われる緊張感があった。女性という雰囲気も出したくなかった。部下にもそれでやっていた。それは辛いよね、と今は思います。上司は部下に対し、多少弱いところを見せて欲しい。そのほうが、部下が育つんじゃないかな。部下を「使える、使えない」と見るのは自分目線で、視野が狭いからだと思います。

アベリアのホームページ

  
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