馬雲は「思想上は必ずしも入党しているわけではない」
2018年11月26日、共産党機関紙『人民日報』が馬雲が共産党員であると報じていたが、昨年末以来の経緯から判断して、馬雲は「思想上は必ずしも入党しているわけではなく」、彼の「頭の中には搾取階級の穢れが多くあり、その世界観は依然としてブルジョワ階級のそれ」ということになるのだろうか。
どのような資格・資質の持ち主を理想的党員と呼ぶのか。それを『党的基礎知識』(《党的基礎知識》編写組 上海人民出版社 1974年)が教えている。
この本では、「マルクス主義においては、政党は階級闘争が産み出したものであり、同時に階級闘争の手段であ」り、「一切の政党が鮮明なる階級性を具えないなどということはありえない」と説き起こす。
「世界において、これまで階級を超越した政党や、また特定階級の利益を代表しない“全民党”のような政党もありえなかった」と政党の性格を捉えた後、「中国共産党はプロレタリア階級の政党であり、マルクス・レーニン主義の革命理論と革命の風格に基づいて建設されたプロレタリア階級の先鋒隊である」と規定される。
「中国共産党がプロレタリア階級の政党であるということは、我が党がプロレタリア階級の特徴と優れた点を集中的に体現しているからである。プロレタリア階級は人類史において最も偉大なる階級であり、思想・政治・力量のうえからも最も強大な革命階級であり、新しい生産力の代表であり、最も先進的な経済の形式と連係している」ことになる。
「旧社会において、プロレタリア階級は最も過酷に搾取され、深刻極まりない圧迫を余儀なくされ、一切を所有することなく、生産活動にかかわる凡ての手段を持つことを許されず、自らの肉体=労働力を売り捌くことによってのみ生を維持することが可能であった」と説かれる。
――以上の基本認識に沿って、党における指導思想、基本綱領と最終目的、基本路線、一元的指導、民主集中制、規律、三大作風、プロレタリア革命事業の後継者養成、基本組織など14項目にわたる「党の基礎知識」を、青年層に向けて懇切丁寧に解説している。
たとえば「十三 入党条件と入党手続き」を見ると、「年齢が満18歳の中国の労働者、貧農、下層中農、革命的軍人とその他の革命分子で党の規約を認め、党の組織に参加し、その中で積極的に工作を進め、党の決議を厳格に実行し、党の規律を遵守し、党費を納める者は、凡て中国共産党員になりうる」。これが、文革当時の「我が党の性質と共産主義の実現を目指す歴史的任務から決定された」党規約だったのである。
現在、共産党は習近平総書記を頂点にして9200万人超の党員を擁していると報じられるが、全員が「党の規約を認め、党の組織に参加し、その中で積極的に工作を進め、党の決議を厳格に実行し、党の規律を遵守し、党費を納める者」なのか。「労働者、貧農、下層中農、革命的軍人とその他の革命分子」にとって存分な活動空間は確保されているのか。さらに「我が党がプロレタリア階級の特徴と優れた点を集中的に体現している」と胸を張ることのできる党員はどれほどいるのか――疑問は尽きそうにない。
以上は文化大革命期、ことに四人組が権力を揮っていた時期に出版された著作である。それゆえに世界第2位の経済力を背景に世界の覇権をめぐってアメリカに真っ向勝負を挑んでいる中国における現在の共産党とは、やはり同日に論ずることはできそうにない。