バイデンの力点
一般教書演説でバイデン大統領は、黒人の犠牲者と家族に感情移入をして「ジョージ・フロイド警察正義法(警察改革法)」の成立を強く訴えるでしょう。
黒人のジョージ・フロイドさんが昨年5月25日、中西部ミネソタ州ミネアポリスで白人の警察官デリック・ショービン被告に膝で首を9分29秒間押さえつけられて死亡しました。ショービー被告は3つの罪状全てで有罪になりました。バイデン氏はこの機会を逃さないで、法案成立に向けて勢いを得たいと考えています。
カマラ・ハリス副大統領、コリー・ブッカー上院議員(民主党・東部ニュージャージー州)及びカレン・バス下院議員(民主党・西部カリフォルニア州第37選挙区選出)は、ジョージ・フロイド警察正義法案の作成に関与しました。この法案には、警官が容疑者を拘束する際に首を絞めて頸動脈を押さえるテクニックの禁止、無断家宅捜査の禁止、警官を訴訟から保護する「限定的免責」の剥奪等が含まれています。
警官とコミュニティが信頼関係を構築するには、「限定的免責」が障害となっていると、元検事のハリス副大統領は捉えています。そこで、ハリス氏は警官に裁判で責任をとらせるために、「限定的免責」を終わらせるように主張しています。
ジョージ・フロイド警察正義法は20年6月に下院を通過しましたが、バイデン大統領は上院で法案成立に必要な60票を獲得できていません。ただ、世論は警察改革法に関してもバイデン氏支持に回っています。
米ワシントン・ポスト紙とABCニュースによる共同世論調査によると、警察改革法について米国民の15%がバイデン大統領は「やり過ぎ」、32%が「ちょうど良い」と回答しました。それに対して42%が「少なすぎ」と答え、警官の暴力に対するより厳しい法案を求めています。
また、同調査では「この国の警官は過剰な力を行使しないように適切に訓練されている」という声明に対して、全体で55%が「自信が持てない」と回答しました。人種別にみますと、約5割の白人、約8割の黒人及び約7割のヒスパニック系(中南米系)が上の声明に「自信が持てない」と答えています。60%の米国民が、「黒人に対する虐待に対して警官にもっと責任を負わせるべきだ」という声明に賛成しました。要するに、彼らは厳格な警察改革が必要だという立場をとっているのです。
バイデン大統領はフロイドさんが死亡してから約1年が経過するのに、法案が成立していないことに苛立ちを隠せません。一般教書演説で上院を通過すれば、即座に法案に署名すると約束して、5月25日のフロイドさんの命日までに成立するように米議会上院に圧力をかける可能性が高いです。
バイデン氏の一般教書演説に対して、共和党はティム・スコット上院議員(南部サウスカロライナ州)が反論演説を行います。スコット議員は上院共和党で唯一の黒人議員で、警察改革法の共和党バージョンを作成しました。スコット氏は「警官を訴追する基準を下げることは交渉のテーブルには載っていない」と強気の発言をして、警官擁護の立場をとっています。28日の一般教書演説では、バイデン氏がジョージ・フロイド警察正義法の成立に力点を置き、スコット議員が同法の民主党バージョンに反対するでしょう。