2024年11月24日(日)

ウェッジ新刊インタビュー

2012年10月31日

 中国はしょっちゅう風向きが変わる国であるので、それに合わせて最も自分が得をするポジションを必死で探しながらやっていかなければなりません。習の時代は、ますます気が抜けない状態になると思います。

──地方を見ていくと、たしかに中国のこれからが見えてくるような気がします。

富坂氏:薄煕来や尖閣問題で明らかになったように、トップのカリスマ性が落ちています。「正統性が失われる」「ガバナンスが落ちた」と言われますが、その落ちた分はどこへいったのか? これは下に向かっていくしかないんです。地方であったり、企業であったり、そういうところにばらけていくんですよ。権力がどんどん下に流れていくのは止められない。経済人が力を持ちすぎると、共産党一党独裁がなくなる可能性もある。果ては、清末の皇帝のように、総書記が名前だけになる可能性もある。共産党がどこまでそれを食い止められるか、が鍵でしょう。

 中国共産党は、薄給で知られていますが、裏でしっかりお金をもらっています。どこからもらっているか。それは、国有企業です。そのおかげで、国有企業に対して強く出ることができない。国有企業は、どんどん暴走していく。もはや国有企業に首輪は付けられないんです。そのうえ、自分たちの子どもをすべて国有企業に入れている。党が企業に対して、絶対に何もできないと言いきれるのは、そこに理由があります。

 たとえば、文革を起こせば企業の力をそぎ落とすことはできますが、それは自分に刃を向けることになりますよね。ですから、大手術が必要だとわかっていても、市販の薬を飲みながらずるずるとほっておくしかない、というのが僕の見立てです。これからどうなっていくのか、興味が尽きない国ですよ。

富坂 聰(とみさか・さとし)
ジャーナリスト。1964年、愛知県生まれ。北京大学中文系に留学したのち、週刊誌記者などを経てフリー・ライターとなる。抜群の取材力、豊富な人脈を活かした中国のインサイドレポートには定評がある。94年、21世紀国際ノンフィクション大賞(現・小学館ノンフィクション大賞)優秀賞を『龍の伝人たち』(小学館)で受賞。様々な雑誌メディアヘの執筆、さらにテレビのコメンテーターとしても活躍中。『中国という大難』(新潮社)、『中国の地下経済』(文春新書)、『中国マネーの正体』(PHPビジネス新書)等、著書多数。

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