2024年7月20日(土)

Wedge REPORT

2021年6月23日

日本の砂浜は
180年後に消える?

 砂浜という緩衝地帯を失って、津波や高波や浸水の被害も目立ってきた。今や、日本の海岸線の多くが波消しブロックや防波堤や突堤などの人工構造物で固められ、海岸はずたずたにされてしまった。東京湾や大阪湾を見てほしい。海岸線はほとんどがコンクリートで固められて、自然の砂浜は申し訳程度にしか残されていない。

 実際、全国の海岸が平均17㌢ずつ侵食されている計算だ。日本の砂浜の平均が30㍍程度だから、このままでは約180年後には、日本の砂浜が全て失われることになりかねないのだ。

 確かに日本は経済的には豊かになった。でも、その分自然は貧しくなった。「白砂青松(はくしゃせいしょう)」といわれた日本の砂浜がこれほど醜悪になったのに、どれだけの人が気づいているだろうか。これは政治家や行政や建設業者に自然をまかせっぱなしにしてきた、私たち世代の責任でもある。

 今の子どもたちが知っている砂浜は、遠くの国から運ばれてきた砂を敷いた人工の海岸だ。たとえば、和歌山県白浜町の白良浜は、文字通り白い浜辺が観光の目玉である。だが、町名にもなった白い砂は、オーストラリアから輸入したものだ。規模にして約14万㌧。冬季には風による飛散防止のためのネットを張って保護している。阪神甲子園球場で高校の野球選手たちが持ち返る土には中国産が混じっている。

24の島が消えた
インドネシア

 国連の報告書(2014年)によると、世界で毎年500億㌧前後もの砂が使われている。過去20年間で消費量は5倍にもなった。これは東京ドーム2万杯分であり、上流から運ばれて補充される2倍以上の量に相当する。2060年までに820億㌧まで増加する、と国連は予測する。

 誰しも「砂漠にはいくらでも砂があるではないか」という疑問を抱くに違いない。だが、砂漠の砂粒は細かくて表面が滑らかなので、セメントをつなぎにしても互いに絡み合わないのでコンクリートの強度が得られない。粉砂糖とザラメ糖の違いである。

 さらに、世界では大小80万基以上のダムがつくられて上流からの砂の補給を阻み、本来ならば、河口地帯に運ばれるはずの量の半分しかたどり着けない。

 これだけ重要な資源であるのにもかかわらず、砂の採掘や取引を規制する国際条約は存在しない。たとえば、シンガポールは世界最大の砂の輸入国であり、独立以来、近隣のアジア諸国から大量の砂をかき集めて海を埋め立て、国土面積を25%も拡張した。

 シンガポールの初代首相リー・クアンユーはかつて「この国の発展には砂と労働者を近隣の国から集めるのが必須の条件だ」と演説し、周辺国から出稼ぎ労働者を集め、同時に砂もかき集めた。

 この砂を供給したインドネシアでは24の島が消えてしまった。シンガポールの輸入は違法なものも多く、インドネシアをはじめマレーシア、カンボジアなどの輸出国が次々に輸出を禁止した。

 各国の禁輸に対抗するため、シンガポールは砂の国家備蓄をしている。砂を石油並みの戦略的資源と考えていることが分かる。

シンガポール東部のベドックにある備蓄された砂
(SIM CHI YIN/MAGUNAM PHOTOS/AFLO)

 世界が呆れかえったのが、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイに出現した超モダン都市であろう。砂漠のなかに莫大なコンクリートをふんだんにぶちまけて、巨大な人工空間をつくり上げた。圧巻は世界一高い「ブルジュ・ハリファ・タワー」であろう。163階建て828㍍の高さは、東京スカイツリーの1.3倍もある。76万㌧の高性能コンクリート(オリンピックサイズのプールにして132杯分)。それに3万9000㌧の鋼鉄、10万3000平方㍍のガラスが使われた。さらに今年完成予定の「ドバイ・クリークタワー」は1000㍍を超える。

①ブルジュ・ハリファ:アラブ首長国連邦のドバイにある。163階建てで、2004年に着工し、10年に完成した。総工費は約15億ドルとされる
②上海中心大厦:上海中心大厦は、「上海タワー」と訳される。127階建てで、2008年に着工、16年に完成した。総工費は150億元以上とされる
③アブラージュ・アル・ベイト・タワーズ:サウジアラビアのメッカにある複合ビルで、ホテル棟である「メッカ・ロイヤル・クロック タワー」が最も高い。2004年着工、11年完成 写真を拡大
(出所)「Council on Tall Buildings and Urban Habitat」よりウェッジ作成 写真を拡大

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