2024年4月19日(金)

家電口論

2021年7月15日

STEM教育に対する日本の方針

 ネットでプログラミング教育の指導要項を検索すると、「新たに取り組むこと、これからも重視することは? プログラミング教育、コンピュータがプログラムによって動き、社会で活用されていることを体験し、学習します」とあります。

 要するに、何も決まっていません。海外で行われているプログラミング教育の資料などもありますが、あくまでも資料です。確かにSTEMは、創造的なところがあり、幾ら時間、機材、人材を投入しても、終わりがないのも事実です。しかし最低の達成点を明確にしないと、問題も出てくるように思います。

 実際、今の段階では内容、機材、予算などは、各学校に一任されているそうです。

iRobotのRoot

 さて私は、iRobotのSTEMでルンバ(正確にはプログラム変更ができるプログラミング教育のために開発されたルンバ)が使われるところをみたわけですが、ルンバは最低でも39800円(税込)します。

 また子どもには大きく、重い。小学生の教材としては、重く、高価です。このため、iRobotは教育用に「Root」を開発しました。ルンバの雰囲気を残しつつ、教育用教材として開発されたものです。いろいろな特徴がありますが、動く以外、大きくは3つの特徴があります。

(1)表現力豊か

 Rootは、ロボット掃除機「ルンバ」の動き、前進、後進、左右への方向転換を受け継ぎながら、掃除機能は無くなっています。代わりに付け加えられたのは、表現機能。中央にサインペンを差し込むことにより、軌跡で画を書いたり、光らせたり、音を出したりすることができます。R2D2のように「ピポピポ」音で受け答えすることも可能です。

(2)白板で使える

 大展示会でよく使われるロボット掃除機の展示方法に壁を昇らせると言うのがあります。吸引力が強いロボット掃除機なら可能なのも事実ですが、目立ちます。Rootは吸引力を持ちませんので、同じことを磁石で行います。白板上を行ったり来たりするわけです。先生が説明する時、とても使える機能です。

(3)力量にあった方法でプログラミングができる

 Rootには、3つのレベルのプログラミング表現方法があります。グラフィカル・コーディング、ハイブリッド・コーディング、フルテキスト・コーディングです。グラフィカル・コーディングは、予め決められたプログラム(例えば「8cm前に進む」)を1つのブロックとして、そのブロックを組み合わせて、複雑な動きをさせます。前述のSTEMで使われたコーディングで、小学生でも容易にコツを掴んで、使いこなします。ハイブリッドは、そのブロック内のプログラムにいろいろな条件をマニュアルで付け加えるレベル。

 (1)(2)でプログラムの基本を学び、(3)で自在に書くことを学びます。Rootひとつで、小学校〜高校のプログラミング教育までサポートできるわけです。

導入校での評判は上々

 本来この目で確かめるところですが、コロナ禍ですからチョイと授業参観と言うわけでには行きません。このため録画でチェックさせてもらいました。

 そこには、STEMと同じ状況は映し出されていました。まず、子どもたちの反応が違います。デジタル・ネイチャーの彼らは基本、グラフィカル・コーディングは難なくこなしますが、対象への興味があればある程、早くできるようになります。目標は定められてはいないとは言え、時間に余裕がある限り、生徒にはいろいろいじってもらい、自発的にいろいろなプログラムを組んでもらうことも必要です。そのためには、興味を引く教材であることが必要です。

 Rootはそれを軽々クリアします。そりゃそうですね。自分が持っていなくても、友達ん家にロボット掃除機があるとすれば、子どもは興味津々で見に行くことでしょう。そして感嘆することでしょう。そのミニチュア・ロボットを自分の思い通りに操れるのです。テンション揚げ揚げ。当然、授業の効率も上がります。

 やはり、ここでも子どもはニコニコ。楽しかった、面白かった。向上の源泉たる好奇心が、顔に表れていました。

第二弾 Root rt0

 さて、Rootでここまで37都道府県の小学校に採用されていますが、iRobot社は7月8日に Root rt0を発売しました。rt0とRootの一番の違いは、(2)の磁石の有無。この機能は、基本教師用のものです。Rootを多く使うのは生徒ですから、無駄な機能とも言えます。rt0は、生徒用のコストダウンモデルと考えてもらえればと思います。ちなみに価格は、2万4800円(税込)。5000円安です。

 もう一度考えてみて欲しいのですが、このプログラム教育にかける予算はあまりないのです。それでなくても、コロナ禍、デジタル対応(タブレット、安価PC、在宅授業用設備)で、お金がないのが現状。iRobot社は少しでも、それに答えようとしたわけです。

 ちなみに時々「デジタル化」で、安価タブレット、安価PCのレポートがメディアに載りますが、その時に出てくるワードは「お金がない」。これはプログラミング教育も同じです。お金の問題はついて回ります。

 お金がないため、シミュレーションだけでプログラミング教育を終わらせることを考えている学校もあるとか。しかし、幼い頃の面白い体験はとても大切。できる限り、VRではなく、リアルが大切だと思います。某学園に補助金を出すなら、生徒を育てる方に税金を使ってはもらえなでしょうか?

  
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