家電口論

2021年4月3日

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多賀一晃 (たが・かずあき)

生活家電.com主宰

スマート家電グランプリ審査員。主催する『生活家電.com』を通じ、家電の新製品情報、使いこなし情報他を発信中。過去、某メーカーでAVメディアの商品企画を担当、オーディオ、光ディスクにも精通。また米・食味鑑定士の資格を有する。水、米、パン、珈琲、お茶の味に厳しい。

アイリスオーヤマ『Whiz iアイリスエディション』

 アイリスオーヤマ。家電では、決してビッグブランドではありません。が、ユニークな切り口(機能)とリーズナブルな価格をうまく組み合わせた商品開発で、参入後、名を馳せてきました。

 昨年秋口に発売、発表したテレビには、大手家電メーカーからみると「邪道」と言われかねない、白内障の人を考えに入れた「はっきりモード」を搭載。高齢化社会に寄り添います。

 しかし、昨年のアイリスオーヤマの真価は、コロナ禍という閉塞的な状況で、出した数々の対応製品であるような気がします。「国内生産マスク」(『アイリスオーヤマのマスク、何がすごいのか?』)を皮切りに、「業務用非接触型温度計」の取り扱い、テレワークに欠かせない「webカメラ」などなど。そしてこの春は、テレワークで使いやすい「ノートPC」を発売するなど、実に幅広い製品を用意、コロナ禍の色々な要望に答えています。

 加えて、アイリスオーヤマとペッパーでおなじみのソフトバンクロボティクスが合弁会社「アイリスロボティクス社」が、この2月に設立されました。法人向けのロボットサービスの本格展開をするとのことです。

 なぜ業務用? ということと共に、今、各社が始めている「エンターテイメントロボット」(シャープのロボホン、ソニーのアイボ、パナソニックの二コボ〈Makuakeでテストマーケティング中〉、日立GLSと資本提携したGroove Xのラボットなど。基本的に役に立たないのが特徴)への布石か? という思いがめぐります。

 アイリスオーヤマの業務用ロボットを取材レポートします。

AI除菌清掃ロボット「Whiz iアイリスエディション」

 

 まずは、売り物のロボットを見せてもらいに、浜松町のアイリスオーヤマへ行ってきました。

 一目見て驚愕しました。そこで出会ったお掃除ロボットは、芝刈り機のように大きな取手を持つ、タンク型の給水タンクの様なロボット。可愛い「お掃除」という言葉が、それなりに似合うiRobot社のルンバと違い、威圧感たっぷり。

 業務用製品の特徴に「タフ」であることがありますが、それを地でいくようなゴッツイたたずまいです。「お掃除」と言う口語ではなく「清掃」と言いたい感じです。空港で時々見かける高さ1メートル以上ある床掃除機を半分に切ったモノというべきでしょうか? お世辞にでも、家庭で使うモノではありません。

 そして、使い方の説明を聞くうちに、さらにびっくりしました。それは家庭用ロボット掃除機とは、思想が全く違ったからです。

 

 例えば、ルンバのフラッグシップモデル「ルンバ i9」。スィッチを入れると、初めはフラフラと何かを探すように動きます。しかし「壁」を探し当てると、あとは、隅から隅へと勝手に掃除をしてくれます。

 ところが、 Whiz iアイリスエディション(以下 Wiz)は、ぜんぜん違います。人がコースを覚えさせて、そのコースに沿って掃除をしていくのです。

 どうやってコースを覚えさせるのかというと、まずスタート地点にQRコードを貼ります。デジカメで認識。そして、取手を持って人が掃除したいコースを動かします。で、出発点に帰ってきて終了。その時のコースを覚え、その通りに移動して掃除をします。

 片や、最新AIを駆使して、自分で位置も把握して掃除を続けられるロボット掃除機。片や、人の教えたことを忠実に再現するロボット掃除機。あまりにも違いがあるすぎて、笑ってしまいました。

 また、人がする通り掃除するわけですから確実にきれいになるとして、本当にこのやり方で、会社、病院他、公共施設で使うのか? とも思ってしまったのも事実です。

業務用掃除機ビジネスが好調な理由

 実は、このWiz、業務用掃除機として売り上げ No.1なのです。ますます驚きました。AIと言いながら、そんなに自律性のない、人の動いたところを通るだけ。しかも、ペッパーのような愛嬌のあるタイプではありません。

 売れている理由は「コロナ禍」です。セールス資料を見せてもらうと、米国疾病予防管理センター(CDC)の話が掲載されています。資料によると、コロナ患者の放ったコロナウイルスを含む飛沫は、時間が立つと床に落ちるのですが、再度、空気中に飛ばされ、感染の原因になる旨が書かれています。

 私も初めて聞きました。花粉のように硬く大きいモノが踏みつけられた弾みに飛ぶというのは分かります。ところが、このセールス資料は、脆弱なウイルスも同じようなことが起こると言っているわけです。

 飛沫がついた取手を手で触ってしまった、その飛沫が付いた手で口を拭いてしまい感染したという接触感染ならわかるのですが、ウイルスはタンパク質の塊。飛沫に守られていても1週間持つか持たないかの脆弱性。それが床に落ちても、再び宙に浮き問題になるというのは、想像もしませんでした。付着ウイルス対策は、手洗いなど手先消毒で対応できると考えていたので、見識を改めなければなりません。掃除の有無により、浮遊ウイルスが変化するデータもありました。

 要するに、多くの人が通るところは、日に何回も掃除しなければ、ならないということです。特に感染の可能性がある場所、病院、公共施設、会社は特にです。病院は院内感染を防ぐ必要がありますし、公共施設は使用者を、会社は自社の社員を守らなければなりません。そんな時、確実な動作で、確実に掃除してくれるのが、Wizというわけです。

 確かに、売れなければ、おかしいです。

コロナで民生用ロボット掃除機は売れるのか?

 しかし、業務用ロボットの「床に落ちたウイルス飛沫が再浮遊する」という理論は、一般民生用のロボット掃除機には通じません。感染者がいない限り、ウイルスは床にありません。

 民生用ロボット掃除機の売りはコロナで伸びていると言います。こちらの理由は、在宅時間が延びたことによります。要するに汚いところにいたくない。しかし、人がいると必ず汚れます。要は面倒くさいのですね。

 また、iRobotが進めている、リーズナブルプライス モデルの充実も功を奏していると思います。

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