2024年12月22日(日)

家電口論

2019年12月27日

 2019年晩秋、スマホで世界第4位、中国第2位のシャオミが、日本初上陸。その時、IoT 家電も上陸するとは聞いていたのですが、フタを開けるとビックリの、1万円を切る(税抜)炊飯器「MI IH炊飯器」。

 そして、シャープもデザインに凝った安価炊飯器を上市しました。この二つ、実はかなり似ているのです。どこが? と言うと、元パナソニック社員の手が入っているところです。新しい技術の伝搬を見る思いでした。

シャオミの炊飯器

低価格帯、炊飯器市場とは?

 19年は、炊飯器のすごいモデルがタイガー魔法瓶、象印マホービンから出ています。広範囲の「合数」で美味しく炊けるモデルです。例えば、今までの5合の高級炊飯器では、1合はそれなでりしか炊けませんでした。これは内釜の上のスペース差が大きすぎ、何らかの熱対策が必要だったからです。

 それなら、少量モデルを買えばよいじゃない、となりますが、誰かが来た時のもてなし(多くは孫、子)の食事では美味い白米は食べさせたいもの。このため、5合でも1合でも美味しく炊けることは大きな課題でした。19年、アタッチメントでスペースをコントロールする他、いろいろな工夫をした全合美味しいというモデルが出たのです。

 一方、安価炊飯器は、あまり美味しさを強調しません。水分量がドンピシャで炊けたお米は、どんな炊飯器でも美味しいです。その上、お米が暖かい間は、美味しいモノです。が、その中にも技術的順位というモノがあります。

 では、これはどんなヒエラルキーを形成しているかというと、炊飯のポイントになる火力で分けています。炊飯器の火力は、「マイコン制御ヒーター」と「IH」に分けられます。どちらがスゴいかというと、IHの方が瞬時に火力を上げられるなど、パワー、コントロール共に上です。このため、「マイコン制御ヒーター」より「IH」が格上と言うのが基本です。それに「圧力」が加わったモノが現在の炊飯器ですから、「IH」<「IH+圧力」となります。

 そして、それぞれ「マイコン制御ヒーター」1〜2万円、「IH」2〜3万円、「IH+圧力」が3万円以上となります。また、3万円以上のモノは内釜を特殊にするなどの工夫がされています。

 そしてもう一つのポイントは、ユーザーの多くが「一人世帯」と言うことです。高齢者も一人世帯が増えますが、こちらはこの世の美味しいモノを一通り食べてきた世代。かなり味にうるさいです。このため、こちらの人の多くは、高級炊飯器へ目が向けられます。

 このため、安価炊飯器のメイン層は、若者中心となります。住居はワンルームがほとんど。そして、この若者は余りモノに執着せず、どちらかというとシンプルライフをお好みます。このため調理家電も、炊飯器、炊飯器したデザインではなく、生活を感じさせないデザインが好まれます。これが今の安価炊飯器の大まかな市場の状況です。

「コストダウン」+「美味しさ」のシャオミ

 そんな中、シャオミが日本市場に提案した炊飯器は、中国のメーカーらしく、高い技術日本より安く提供されています。IHを使っているのに、9999円。しかもスマホメーカーらしくIoT付き。単純に言うと、今までの半額で、いい技術を使えるようにしたモデルというわけです。

 これは間違いなく、地元中国市場が日本の10倍の規模を持つことに由来します。規模による量産効果です。

 しかし、シャオミはスマホメーカー。炊飯器としては、どうなのでしょうか? 日本で流通しているお米は「ジャポニカ米」で、一般に中国で食べられているお米とはかなり特長が異なります。

 シャオミが取った策はヘッドハンティング。サンヨー、パナソニックで炊飯器開発に従事、「おどり炊き」を作り上げた内藤毅氏を共同開発者として招き入れたのです。要するに、日本人のプロに日本人の口に合うように、開発に加わってもらったわけです。技術は、会社に付きません。人に付きます。開発した人は、その技術の長所、短所を知り尽くしているので、強いわけです。そう言った人をヘッドハントする。韓国の時は半導体、テレビでしたが、中国では白物家電にも及んだわけです。

 正直、すごいことになったと思いました。高級炊飯器を爆買いしてくれていた中国が、日本に安くて美味しそうな炊飯器で、日本に乗り込んできたわけです。まだ試食できていないので、どれくらい美味しく炊けるのかはわかりませんが、「おどり炊き」同等だったら、パナソニックは真っ青になります。安いモデルながら、本気の気迫が伝わってきます。


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