「五輪が始まるとポジティブなものに変化」
近年の五輪は、開催国国内で大会前まで痛烈な批判が浴びせられる特徴がある。成功例とされるロンドン大会でも、開催費用が膨れ上がり、メディアは批判キャンペーンを展開した。
筆者は東京大会の延期決定前に、英国オリンピック委員会(BOA)トップのビル・スウィーニーCEO(最高経営責任者)にインタビューしたことがある。
スウィーニー氏はロンドン大会の経験を踏まえ、日本の大会関係者に向けて「ジャーナリズムのネガティブな声に耳を貸すなと言いたい」とアドバイスした。
リオ大会ではジカ熱の蔓延や治安の悪化で、大会前には警告報道が散々繰り返された。しかし大会が始まってからは一変。選手たちの奮闘で連日盛り上がって、成功裡に事が進んだ。
東京大会についても、海外のメディアは過酷な天候、東京の街の複雑さ、ロジスティックスの難しさについて「センセーショナルでネガティブな報道」をするはずだが、スウィーニー氏はそうした大会前の報道ぶりは「概してそういうもの。事前にはものすごく心配するけど、実際に五輪が始まるとネガティブな雰囲気は去って、ポジティブなものに変化する」と経験則を踏まえて語った。
現代社会は多種多様な価値観がぶつかりあって、そうした軋轢や摩擦が飛び交う「情報の海」の中にわれわれは生きている。たらればだが、コロナ禍がなかったとしても、きっと東京大会も開催前は様々な問題が噴出し、批判報道が展開されたに違いない。
100年の1度のパンデミックの最中に行われる東京大会。報道ぶりのビフォーアフターを検証することも、今後の五輪パラの開催を考える上で一つのレガシーとなるだろう。
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