Wedge REPORT

2021年7月20日

»著者プロフィール
閉じる

佐々木正明 (ささき・まさあき)

ジャーナリスト、大和大学社会学部教授

1971年岩手県生まれ。大阪外国語大学(現・大阪大学外国語学部)卒業後、産経新聞社に入社、大阪社会部、モスクワ支局長、リオデジャネイロ支局長、運動部次長、社会部次長を歴任。特派員として五輪・パラリンピックやサッカーW杯を取材した。2021年春から現職。著書に『恐怖の環境テロリスト』(新潮新書)、『シー・シェパードの正体』(扶桑社新書)。

「五輪が始まるとポジティブなものに変化」

 近年の五輪は、開催国国内で大会前まで痛烈な批判が浴びせられる特徴がある。成功例とされるロンドン大会でも、開催費用が膨れ上がり、メディアは批判キャンペーンを展開した。

 筆者は東京大会の延期決定前に、英国オリンピック委員会(BOA)トップのビル・スウィーニーCEO(最高経営責任者)にインタビューしたことがある。

 スウィーニー氏はロンドン大会の経験を踏まえ、日本の大会関係者に向けて「ジャーナリズムのネガティブな声に耳を貸すなと言いたい」とアドバイスした。

 リオ大会ではジカ熱の蔓延や治安の悪化で、大会前には警告報道が散々繰り返された。しかし大会が始まってからは一変。選手たちの奮闘で連日盛り上がって、成功裡に事が進んだ。

 東京大会についても、海外のメディアは過酷な天候、東京の街の複雑さ、ロジスティックスの難しさについて「センセーショナルでネガティブな報道」をするはずだが、スウィーニー氏はそうした大会前の報道ぶりは「概してそういうもの。事前にはものすごく心配するけど、実際に五輪が始まるとネガティブな雰囲気は去って、ポジティブなものに変化する」と経験則を踏まえて語った。

 現代社会は多種多様な価値観がぶつかりあって、そうした軋轢や摩擦が飛び交う「情報の海」の中にわれわれは生きている。たらればだが、コロナ禍がなかったとしても、きっと東京大会も開催前は様々な問題が噴出し、批判報道が展開されたに違いない。

 100年の1度のパンデミックの最中に行われる東京大会。報道ぶりのビフォーアフターを検証することも、今後の五輪パラの開催を考える上で一つのレガシーとなるだろう。

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

関連記事

新着記事

»もっと見る