2024年4月16日(火)

Wedge REPORT

2021年7月25日

古くは青島幸男氏から続く

 東京都におけるポピュリズムは、最近になって起きたことではない。古くは1995年4月に就任した青島幸男氏からある。

 早稲田大学大学院在学時に放送台本を執筆してデビューした青島氏は、『スーダラ節』の作詞やドラマ『意地悪ばあさん』での主演といったタレントとしての人気を武器に都知事選へ出馬。自民、公明、社会(当時)など各党の推薦を受けた内閣官房副長官の石原信雄氏はじめ有力候補を、街頭演説など選挙活動せずに破った。

 「既成政党や利益団体の支援を受けず、既存選挙活動とは異なるやり方で支持を得たまさにポピュリズムの始まりともとれる動きだった」と水島教授は指摘する。青島氏は、バブル崩壊で批判する都民の声を汲み公約に掲げた世界都市博覧会の中止を果たしたものの、都政での指導力を発揮できずに1期で引退。だが、次の石原慎太郎氏は「断固たる姿勢を持ち、国と対峙する『右派ポピュリスト』と言える存在」(水島教授)となって4選を果たし、辞任会見の場で「後継指名」された猪瀬直樹氏はその注目を追い風に知事選過去最多となる約434万票を得た。

 こうした「反既成政党」や不満を取り込みながら支持を得る「人気投票」の流れは、他の都市部でも起こり得るとの指摘があるが、必ずしもそうではない。「タレントであった森田健作氏が千葉県知事になったのは、人気だけでなく、自民党や公明党の支持を受けた保守系無所属として、経済団体の推薦も受けていた。固い団体の統率力の恩恵も受けながら地方の支持も丁寧に汲み取っていく既存の政治に則った形となっている。人口の膨れ上がりが続く東京が最も無党派層が集まり、ポピュリズムへの傾向が色濃く出る地域であると言える」と水島教授は話す。

 東京都は全国の都道府県で唯一、地方交付税不交付団体であり、中央政府からの恩恵やコントロールが弱い。住民の入れ替わりが多いため、必ずしも自民党が第一党ではなく、農村部のような強い地域団体によるつながりも薄い。「ポピュリズム戦略をとらない方が選挙戦で不利になる状態」と水島教授は強調する。

 都知事選においては、ポピュリズム戦略は候補者の必須の条件ともなっており、そうした前提で選挙を見る必要がありそうだ。

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