Wedge REPORT

2021年7月25日

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 新型コロナウイルス感染症拡大においても、東京一極集中はなくなるどころか、むしろ加速している。こうした人口動態が東京都知事選の選挙行動やリーダーの立ち振る舞いに影響を及ぼしているという。『ポピュリズムとは何か』(中公新書)の著書がある千葉大学の水島治郎教授にインタビューした。

(つのだよしお/アフロ)

 水島教授は大都市と地方では、投票行動が大きく異なることを指摘する。「既成政党は与党も野党も地方を重視した政策や公約を掲げる傾向にある。都市部の住民は既成政党から利益を受けていないと感じ、一定の距離を置いている」と話す。

 これがポピュリズムの火種となっているという。水島教授によると、ポピュリズムには2つの定義があるとし、一つは「政党や議会を迂回して、有権者に直接訴えかける政治手法」で、もう一つは「既成政党やエリートを批判する政治運動」としている。欧米などで近年、伸張したポピュリズムは後者のもので、アメリカで2016年にドナルド・トランプ前大統領が巻き起こしたものは、既存エリートやエスタブリッシュメント(支配階級)への反発だった。イギリスでのブレクジットは移民に寛容な政治経済エリートに痛みを負わされた人々の反感によるものだ。

 「日本においては、移民や難民による不満という大きな波がないということもあり、右派や左派といったポピュリズムはない。〝反既成政党〟〝反既得権益〟というマイルドなポピュリズムとなっている」と水島教授は解説する。

「反中央政府」で続く小池氏の勢い

 この波に乗り続けているのが現在の東京都知事である小池百合子氏だ。自民党三役を務めていたにもかかわらず、16年7月の都知事選初出馬の際に、自民党都連を「いつ、誰が何を決めているか分からないブラックボックスだ」とし、当時の都連幹事長を「東京都議会のドン」と批判した。まさに「既成政党やエリートを批判する」選挙戦略で、自民党や公明党の推薦を受けた元総務相の増田寛也氏(現・日本郵政社長)、民進党や共産党、社民党、生活の党の推薦を受けたジャーナリストの鳥越俊太郎氏らを破った。

 その後の都議会議員選挙でも自らが率いる「都民ファーストの会」が大躍進し、新風を巻き起こした。ただ、公約で掲げた待機児童や満員電車をなくすといった「7つのゼロ」はほぼ達成されていない。

 それでも、20年7月の都知事選挙では、次点に大差をつけて再選を果たした。水島教授は「公約を守らなかったことが致命傷にならず、国と一定の距離をとりながら新型コロナウイルス感染症対策はじめ政治運営するのが支持されたと言える」と指摘する。21年7月の都議選においても、自民党に第一党の地位を譲るも、議席数で拮抗した第二党となり、自民公明両党による過半数を阻止した。

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