2023年12月11日(月)

ザ・移動革命

2021年7月30日

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伊藤慎介 (いとう・しんすけ)

株式会社rimOnO 代表取締役社長

1999年に旧通商産業省(経済産業省)に入省し、自動車、IT、エレクトロニクス、航空機などの分野で複数の国家プロジェクトに携わる。2014年に退官し、同年9月に超小型電気自動車のベンチャー企業、株式会社rimOnO(リモノ)を設立。2016年5月に布製ボディの超小型電気自動車”rimOnO Prototype 01”を発表。現在は、CASEやMaaSなどモビリティ分野のイノベーション活動に従事。KPMGモビリティ研究所アドバイザー、東京電力ホールディングス株式会EV戦略特任顧問などを兼務。

建設中のParklet(James Rice/gettyimages)

 7月20日、サンフランシスコ市は「Parklet」を含むShared Space(共有スペース)の利用について、期間限定で実施していた措置を恒久化すると決定した。「Parklet」というのは下図にあるように路上の駐車スペースを廃止して、その代わりにベンチ、テーブル、自転車置き場などを設置する小さな公園のようなものを指す。また、Shared Spaceというのは屋外で飲食や会話などが行える公共の共有スペースのことを指す。日本でいうと歩行者天国のようなイメージに近い。

 
↑ 路上の駐車スペースの代わりに設置されるParklet(出典:San Francisco Parklet Manualより)

 欧米の主要都市では新型コロナウィルスの感染拡大によってロックダウンが行われ、店内での飲食が禁止された。屋外であれば飲食が可能となったが、市内の飲食店や商店の多くは屋外の敷地を持っていないため、緊急措置として歩道や車道の一部をShared Spaceとして利用することを許可した。今回のサンフランシスコ市の決定は、この緊急措置を恒久化したということだ。

 「Parklet」は2010年に世界で初めてサンフランシスコで登場した。20世紀に進んだモータリゼーションの影響で車道の多い都市空間となってしまったことから、公園のような場所を取り戻すための政策として考え出されたものだ。現在、「Parklet」は市内60カ所以上に設置されているという。そして、サンフランシスコで生まれた「Parklet」はロサンゼルス、シアトル、ダラス、サンディエゴ、シカゴなど全米の多くの都市に広がっている。

 欧米の都市に行くと、路肩にずらりとクルマが駐車されていて景観が損なわれていると感じることがあるが、「Parklet」が設置されると街の景観が大きく改善するように思う。また、気候の良い日に外で食事を楽しめる機会が増えることも街づくりの観点で素晴らしいと感じる。しかし、「Parklet」は良いこと尽くしというわけではないらしい。


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