アメリカの都市計画の新しいモデルとなったポートランド
20世紀型の都市計画を大きく見直すきっかけになったのが、オレゴン州ポートランド市の成功ではないかと考えている。2年ほどワシントン州のシアトルに居住していたことがあるが、アメリカ北西部に位置するワシントン州とオレゴン州はPacific Northwestと呼ばれていて自然豊かな環境であることから環境調和型のライフスタイルを重視する傾向が強い。
先駆者であるポートランドでは70年代に高速道路を整備する代わりにライトレール(路面電車)を導入することを決定している。また、90年代には郊外シフトを防止するために都市化境界線(Urban Growth Boundary)を設定し、ポートランド市だけでなく周辺都市と連携して限られた都市部の有効活用を進める2040 Growth Conceptを取りまとめている。その中にはクルマだけでなく、公共交通、自転車、徒歩による移動も支援する交通政策が盛り込まれていた。
都市としての成長と自然との調和を両立する戦略をとったポートランドだが、市外からの流入も含めて人口は着実に増加していった。また、この地域に本社機能があるNikeやColumbia Sportswearだけでなく研究開発拠点を持つIntelなどの産業クラスターがあったことで都市としての成長も遂げている。私がポートランドを訪問したのはもう15年以上前になるが、かつての倉庫を改修して店舗や飲食店に生まれ変わったPearl Districtなど、街歩きが楽しい場所であったことを記憶している。
クルマから徒歩・自転車・マイクロモビリティへと舵を切る交通政策を進めている欧米主要都市の動向を見ていると、ポートランドの成功モデルを追いかけているように見える。2025年にカーボンニュートラルを目指しているデンマーク・コペンハーゲンをはじめ、CO2削減目標を設定している都市が増えているが、環境に配慮したライフスタイルを求める若者やイノベーターを取り込むことで、都市としての成長を意識しているからだろう。