Wedge REPORT

2021年8月31日

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存在しないことに
なっている「残コン」

 静岡県伊豆の国市で生コン会社・長岡生コンクリートを経営する宮本充也社長は、「商慣習で、残コンは生コン業者が引き取って廃棄してきた。このため存在しないことになっている」と指摘する。

 実際、施工者に「(残コンを)持って帰って」と頼まれれば、次の仕事のことを考えて断ることは難しいとされる。また「多くの現場で残コンは、生コン業者が無償で引き取っている」とも言われる。

 ここに来て有償化する動きも出ているが、RRCS事務局の藤井成厚氏は「そもそも、販売した時点で所有権は購入者に移っているから有償化の流れは当然だが、その動きはまだまだ鈍い」と指摘する。 

 では、余った「残コン」は、これまでどのように処理されてきたのか。多くは、固められた後で、砕かれて「ガラ」と呼ばれる状態にされたうえで、道路にアスファルトを敷く前の路盤材として使用されてきた。ただし、コンクリートとして使用されるのと比べると利用価値は落ちる。

 14年、日本産業規格(JIS)の改正によって「残コン」を水で洗い、「砂・砂利」とセメントと水が混ざった「泥水」に分けることで、「砂・砂利」は「回収骨材(骨材=コンクリートの材料)」として再利用することも可能になったが、「ユーザーは新品を好む傾向にある」(業界関係者)という。

 使用済みコンクリートから作られる「再生骨材」と違い、「回収骨材」は、品質に差がないことから使用が進んでもよさそうなものだが、「イメージによって選ばれない」という。「エコポイントのように回収骨材を使用することでメリットが生まれるような仕組み作りをすればよいのではないか」(同)との声もある。

 砂資源を巡って、マフィアが暗躍するような事態にまで発展しているインドでは、「砂・砂利資源の不足が著しいために、再生材を骨材の一部として利用することが義務付けられている」(野口教授)と指摘するように、今後は日本でも回収骨材など再生材の使用を促進するような措置が必要となるだろう。

 もう一つ問題なのが、「泥水」だ。これは、加圧脱水して「スラッジケーキ」と呼ばれるものに加工され、産業廃棄物として処分される。ただ、この費用負担も大きく、最終処分場のキャパシティが不足する中、受け入れを拒否されることが出てきているという。「残コン」の処理を巡っては不法投棄されるという事案も発生している。

 このような中で、中央省庁の「残コン」問題に対する意識は低いと言わざるを得ない。小誌は「残コン」問題について国土交通省、経済産業省、環境省にたらい回しにされながら何度も問うたが、「問題は認識している」という回答のみで具体的な行動をとっているというコメントは出てこなかった。

 生コンの使用者であるゼネコンはどう捉えているのか。鹿島建設技術研究所・閑田徹志副所長は「これまでは商習慣で、案件ごとにケースバイケースでやってきた。中には生コンの販売価格に残コンの処理費用が含まれているという判断もあったと思われる」という。ただし、「残コン」の処理費用をきちんと支払う、再生材の利用促進といったことは「時代の要請であり、今後は引き受けていかざるを得ない」と話す。実際、画像解析技術などによって生コンの必要量をより正確に把握して「残コン」を減らすという技術開発も進められている。

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