2024年4月20日(土)

経済の常識 VS 政策の非常識

2021年9月1日

 こういうことを避けるために、累積死亡者数を累積感染者数で割ると値は1.1%となる。初期の混乱時を除くと低下傾向は見られなかったが、ワクチンのおかげで死亡率は低下し、直近では0.1%になっている。ただし、デルタ株の感染力の強さから感染者数が急増しているので、感染者数も入院治療を要するものも増加している。

感染者1人に1659万円使った計算

 入院治療を要するもの/感染者数の数値自体にそれほど意味はないが、動きは重要である。こちらも死亡者数と同じような動きをしている。累積患者数で割ると低下傾向は見られない。

 以上のことを考えると、医療体制や治療法の確立に向けて支出された7.8兆円は、初期の混乱から死亡率を低下させた後は、それほど顕著な成果を上げたわけではないようだ。しかし、患者がいればそれは診なければならない訳で、2020年度の累積の感染者数47万人に対して、感染者1人に1659万円使ったことになる。軽症の感染者が8割とされていることを考えると、これは少し使い過ぎではないだろうか。

 治療薬の開発・ワクチンの開発と接種の1.9兆円は、ワクチンの分については第1回「ワクチンは安すぎる」で述べたように大いに効果があった。まだ顕著な効果のある治療薬はないが、今後、開発されていくだろう。

 以上、4回にわたって、コロナ対策としてワクチン、検疫、PCR検査(抗原検査を含む)、日本独自のクラスター対策、医療体制の拡充、治療法の確立と特効薬の開発という、感染症を予防する、感染症にかかってしまった人々を助ける予算の費用対効果を検討してきた。

 現状で圧倒的に費用対効果が高いのはワクチンであり、次は国境検疫である。PCR検査も、私の計算が正しければそれなりの効果がある。それ以外は、劇的な効果があるとは認められない。

 しかし、感染者は追跡しなければならず、患者は治療しなければならない。必要なことはしなければならないと考えると、費用対効果を考える余地もなく支出するしかないのかもしれない。だが、それにしても無駄に高い支出が多いという気はする。

   
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