2022年7月3日(日)

#財政危機と闘います

2021年9月27日

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島澤 諭 (しまさわ・まなぶ)

関東学院大学経済学部教授

富山県生まれ。1994年東京大学経済学部卒業 同年4月経済企画庁入庁。調査局内国調査第一課、総合計画局計量班、調査局国際経済第一課等を経て2001年内閣府退官。02年秋田経済法科大学経済学部専任講師、04年10月秋田大学教育文化学部准教授。15年4月から中部圏社会経済研究所研究部長を経て、22年4月より現職。

日本で高い経済成長率の確保は困難

 ただし、企業の技術革新を後押しするにしても、政府が直接新技術を開発するにしても、新たな財政投入が必要になる。つまり、こうした費用負担がどの程度の金額になり、どのように(どの世代にどの程度の額)負担させるかで、若者の得も減じられてしまう可能性もある。

 しかも、何よりの問題は、日本のようなキャッチアップが終了した大国で年率4.4%もの高い成長が可能であるかは疑問である。例えば、内閣府によれば2010年から20年までの平均潜在成長率は0.8%に過ぎない(図2)。

(出典)内閣府資料に基づき筆者作成 写真を拡大

ビッグ・プッシュのコストは60兆円

 したがって、安定成長期並みの成長率4.4%を実現するには、いわゆる「ビッグ・プッシュ」が必要になるはずだ。このビッグ・プッシュがどの程度の大きさかを、文部科学省科学技術・学術政策研究所「科学技術指標2021」と内閣府経済社会総合研究所国民経済計算部「国民経済計算」により一定の仮定の下で試算したところ、毎年60兆円弱の財政投入が必要になる。

 高い経済成長によって税収も増える「経済と財政の好循環」が働くとしても、消費税に換算して30%ほどに相当する財政投入資金の全額を税の自然増収で回収されるとするには無理があるだろう。

 確かに、高い経済成長の実現は若者にとっては得になる可能性もあるが、その財源をいかに調達するのか、財源論もセットで提示することは、一国の総理大臣を目指す立場としての責任と言えるのではないだろうか。

  
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