日本で高い経済成長率の確保は困難
ただし、企業の技術革新を後押しするにしても、政府が直接新技術を開発するにしても、新たな財政投入が必要になる。つまり、こうした費用負担がどの程度の金額になり、どのように(どの世代にどの程度の額)負担させるかで、若者の得も減じられてしまう可能性もある。
しかも、何よりの問題は、日本のようなキャッチアップが終了した大国で年率4.4%もの高い成長が可能であるかは疑問である。例えば、内閣府によれば2010年から20年までの平均潜在成長率は0.8%に過ぎない(図2)。
ビッグ・プッシュのコストは60兆円
したがって、安定成長期並みの成長率4.4%を実現するには、いわゆる「ビッグ・プッシュ」が必要になるはずだ。このビッグ・プッシュがどの程度の大きさかを、文部科学省科学技術・学術政策研究所「科学技術指標2021」と内閣府経済社会総合研究所国民経済計算部「国民経済計算」により一定の仮定の下で試算したところ、毎年60兆円弱の財政投入が必要になる。
高い経済成長によって税収も増える「経済と財政の好循環」が働くとしても、消費税に換算して30%ほどに相当する財政投入資金の全額を税の自然増収で回収されるとするには無理があるだろう。
確かに、高い経済成長の実現は若者にとっては得になる可能性もあるが、その財源をいかに調達するのか、財源論もセットで提示することは、一国の総理大臣を目指す立場としての責任と言えるのではないだろうか。