「学習塾が中学を卒業する生徒に配布する冊子で、内容は、どんな大学にどんな学部がある、といったデータが掲載されたものです。学習塾には共通の悩みがあります。せっかく中学生を集めても、高校入学と同時に辞めてしまうことです。冊子は、これを防ぎ“むしろ今から勉強が必要”と伝え、高校生になっても同じ塾へ通ってもらうことを目的としていました。
しかし、実際に塾で中学生と触れあうと、彼らは“高校受験と同じくらいの勉強量で、難関大学に入れる”と思っています。中には高卒でプロサッカー選手になるから勉強しない!と決めている生徒もいる。この子たちが、高校入学時点で大学入試のことを真剣に考えることはまずありません。データが並んでいても……小学生は『読め』と言われれば素直に読みますが、中学生は本人が興味なければ読んでくれません」
そこで彼は、中学生たちに現実的なデータを見せることにした。難関の大学が文字通り狭き門であること、プロサッカー選手も高卒より大卒の方が多いこと、さらには、高卒と大卒では平均年収が数百万円はちがうこと……。
すると、これが評判を呼んだ。
「全国の塾が多数採用してくれただけでなく“この内容なら中3の夏から生徒に渡し、高校選びに役立てたい”とおっしゃって下さり、年に2度、販売のチャンスが訪れるようになったのです」
順風満帆の1年目だった。だが、すぐに挫折が訪れた。
≪POINT≫
よく、会議で「何も発言しないならいる意味などない」と言われないだろうか。1年目社員に求められているのは、若者の意見の代弁なのかもしれない。どの業界にも「ウチの商品・サービスはこういうもの」という不文律があり、先輩たちは既成概念に縛られている。それを知らずに斬新な意見が出せるのが若者の特権なのだ。