2022年7月6日(水)

Wedge SPECIAL REPORT

2021年11月1日

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 旧・住友金属工業と旧・神鋼特殊鋼管(現・ 丸一ステンレス鋼管、山口県下関市)が合弁で設立したジルコプロダクツ(山口県下関市)は、BWR向け原子力燃料の被覆管を製造できる国内唯一のメーカーだったが、BWRの再稼働が見込めない中で、17年に廃業。国内でこの部品を製造できる企業は消失した。こうした原子力事業からの撤退や廃業が相次いでいる。

 メーカーの撤退による技術の散逸を防ぐため、三菱重工は代替メーカーがない機器に関しては、製作図面をもらい受け内製化している。エネ庁も技術伝承支援や代替調達先の選定、一般産業品の活用を試みているが、サプライチェーンの劣化をどこまで防げるかは不透明だ。

「フランスでは14年、米国では35年、新規建設に間が空き、技術の低下やサプライチェーンの弱体化により四苦八苦している。日本も既にフランスに近い水準の空白期間がある。再稼働や新設・リプレースなど明るい未来が見えなければ、投資もされず、技術の保持は難しくなる一方だろう」と、原子力関連企業がつくる日本原子力産業協会の新井史朗理事長は危機感を示す。

 原発建設が可能なメーカーを保持する国は世界でもわずかだ。日本の原発の国産化率は90%を超えているが、このままではそのアドバンテージが消えてしまうことになる。

海外に仕事を求めるも失敗
SMRは救世主になるか?

「ここまで人材の流動性がないのは日本だけだ」

 日本エネルギー経済研究所の村上朋子研究主幹は、業界の硬直性を指摘する。かつての原子力大国であるドイツやスウェーデンの技術者は、アラブ首長国連邦(UAE)といった原発新設が進む新興国で大量採用されているが、日本ではそういった動きはない。日立が英国から撤退したのを最後に、海外案件もない。海外を含む人材の流動性という観点からは日立GEに期待する声もあるが、同社の担当者は「GEも抱えている案件はなく、日米間で現場を共有しているような動きはない」と語る。

 そうした中で現状を打開しうるものとして一部で期待を集めているのが、小型モジュール炉(SMR)である。9月の自民党総裁選においてもSMRが議題となり、フジテレビ番組での討論会で岸田文雄前政調会長(当時)は「研究する価値が十分ある」と発言している。

 世界で最も先行している米新興企業のニュースケール・パワーのSMRは、実用化に向け手続きが進められており「おそらく今後1年以内に、米原子力規制委員会(NRC)より設計認証(DC)が発給されるのではないか」(鈴木清照・三菱総合研究所主席研究員)という段階だ。

 SMRは小型なため原子炉が冷えやすく、また主に地下に設置されるため、安全性を高めやすいとされている。九州大学大学院工学研究院の出光一哉教授は「従来は既存の大型炉にスケールメリットがあったが、災害やテロ対策のコストが増大する中では、SMRにも経済的メリットが出てきた部分もある」とする。

 前出の新井理事長は、SMRが実績を積んでからの話と断りつつ「もし事故時の避難範囲が発電所敷地内で収まるならば革新的。無論それでも周辺地域の避難計画は必要だろうが、例えば、規制委員会によりいくつかの災害・テロ対策が不要と判断されれば、事業者にとって魅力的であり、何より地域の方の安心も高まる」と語る。

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