2022年7月6日(水)

Wedge SPECIAL REPORT

2021年11月1日

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窒息していく原子力
希望的観測では進まない

 SMRの建設に日本企業がサプライヤーとして参画できれば、苦境の最中の原子力業界にとっては数少ない朗報となる。だが、そう話は簡単ではない。国土の広大な米国では僻地の分散電源としての需要が想定されているが、日本にそれを当てはめるのは難しい。

 前出の村上研究主幹は「SMRの技術は40年近く前からあるが、商業化に向けた具体的な動きは乏しいと言わざるを得ない。また今の安全基準でSMRを造ればそれはSMRではなくなる。対応した基準も別途必要となる」と語る。そして関係者や専門家は「いずれにせよ、まずは既存の原子炉の再稼働からだ」と口をそろえる。

 真綿で首を締められるように窒息していく日本の原子力。そこに都合のいい特効薬はない。今こそ国が前面に立ち、再稼働と新設・リプレースを推し進めていく必要があるだろう。

 一方で電力会社も再稼働を実現したいのならば、世界一厳しいとされる規制委員会の安全基準を唯唯諾諾と受け入れるだけではなく、規制のあり方も含め再稼働に向けた建設的な議論を提起していくべきではないのか。

 そのためには電力会社自身の信頼を高めていく必要があるが、今年9月に発覚した東電・柏崎刈羽原発(新潟県)でのテロ対策に関する不祥事のような、国民の信頼を損ねる緊張感の欠如を見るにつけ、本気で再稼働を行う気があるのか首をかしげざるを得ない。

「今のままだと間違いなく、ゼロからの再スタートになる」(村上研究主幹)。日本の原子力の〝火〟を灯し続けるためには国も電力会社も「誰かが何とかしてくれる」という希望的観測を排し、再稼働とその先にある将来の原子力のあり方について、真正面から議論し取り組んでいく必要がある。

 
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 地球温暖化に異常気象……。気候変動対策が必要なことは論を俟たない。だが、「脱炭素」という誰からも異論の出にくい美しい理念に振り回され、実現に向けた課題やリスクから目を背けてはいないか。世界が急速に「脱炭素」に舵を切る今、資源小国・日本が持つべき視点ととるべき道を提言する。
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Wedge 2021年11月号より
脱炭素って安易に語るな
脱炭素って安易に語るな

地球温暖化に異常気象……。気候変動対策が必要なことは論を俟たない。だが、「脱炭素」という誰からも異論の出にくい美しい理念に振り回され、実現に向けた課題やリスクから目を背けてはいないか。世界が急速に「脱炭素」に舵を切る今、資源小国・日本が持つべき視点ととるべき道を提言する。

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