2024年11月22日(金)

復活のキーワード

2013年1月17日

 ベンチャー企業の支援にも「官民ファンド」の活用が検討されている。いくら金融緩和をしても、企業になかなか資金が流れないのが現実だ。大企業はむしろ手元資金が潤沢で、内部留保が積み上がっている。一方で中小企業にはなかなか資金の出し手が現れない。景気低迷が続く中で、中小企業の成長期待が薄まり、破綻リスクが高まっているからだ。

元をただせば国民のおカネ

 ここ3年、中小企業の資金繰りを一手に支えてきたのが「中小企業金融円滑化法」による融資条件の見直しだった。いわゆる「金融モラトリアム(支払い猶予)法」である。民主党に政権交代して金融担当相ポストを握った国民新党が強硬に導入を主張。2009年12月に始まった制度だ。

 これは中小企業から返済条件の見直しを依頼された場合、金融機関はできるだけ応じなければならないというルール。当初はリーマン・ショック後の、中小企業の資金繰りを助ける目的で時限措置として始められたが、東日本大震災などもあり、2度延長された。

 金融庁のまとめでは、09年12月から12年3月末までの間にこの法律に基づいて融資条件の見直しを申請したのは、累計で313万件余りと膨大な数にのぼる。そのうち見直しが実行されたのは289万件余りだ。

 しかもこの見直しの対象になった債権の総額は80兆円弱と巨額だ。このうち55兆円が地方銀行や信用金庫など地域の金融機関の債権である。この件数や金額には、同じ融資で条件見直しを複数回行うなど重複もあるため、どれだけの債権額が純粋な見直し対象で、潜在的な不良債権はいくらぐらいか、正確なところは不明だ。だが、モラトリアムによって、焦げ付く可能性を秘めた十兆円単位の巨額の融資が先送りされていることになる。

金融円滑化法(09年12月)で減少した倒産件数
(出所)東京商工リサーチ
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 東京商工リサーチによると、12年度上半期(4~9月)に全国で倒産した企業件数(負債額1000万円以上)は6051件と、過去20年間で最少となった。景気が回復しているわけではなく、円滑化法によるモラトリアム“効果”であることは疑う余地がない。

 政府は期限が来る来年3月末で、円滑化法は廃止にする方針だ。本来、経済の循環の中で競争によって敗者が出るのは自然なこと。それを無理やり融資条件を緩和して生きながらえさせれば、見た目の倒産は減るが、その分、金融機関の潜在的な不良債権が積み上がっていく。ようやく副作用の大きさに気が付いたというわけだ。


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