最近の世論調査で、共和党支持者の7割近くが依然として次期大統領選への「トランプ再出馬」を支持していると伝えられるだけに、結局、批判の矢面に立たされた議員たちの多くが、式典ボイコットを余儀なくされたというのが真相だ。
このこと自体、与野党対立の深刻さを象徴するものであり、とくにバイデン政権にとって、連邦議会における党派間の断絶はまさに、ゆゆしき事態だ。
党派間の対立は異常事態
筆者は1960年代後半から永年にわたり、米本会議、委員会審議における両党議員たちの熱気あふれる論戦や攻防をつぶさに取材してきた。だが、今日のような党派間の対立ぶりは異常というほかない。
かつては「ビッグ・ガバメント」を標榜する民主党と、政府介入を極力最小限にとどめる「スモール・ガバメント」の共和党という伝統路線の違いこそあれ、議員たちが法案審議の際、党をまたぎ1票を投じる「クロス・ボーティング(cross voting)」は決して珍しくはなかった。
例えば、上院では、チャールズ・パーシー(イリノイ州)、ジェイコブ・ジャビッツ(ニューヨーク州)、マーク・ハットフィールド(オレゴン州)ら共和党有力議員らが、ベトナム戦争、人種差別問題などをめぐり民主党主導の法案に支持投票する一方、サム・ナン(ジョージア州)、ロバート・バード(ウェストバージニア州)ら民主党議員が、教育、社会保障政策などではしばしば共和党に同調する動きを見せたことなどが思い出される。
底流をなす「トランプ主義」
しかし、今回のように、民主党政権下の法案に支持票を投じた共和党議員たちが、「殺害」「放火」の標的にまでされたのは、まさに前代未聞と言うべきだろう。
このような両党間の対立は、トランプ前政権以来、とくに激化してきたことは明らかだが、その底流をなすのが、「トランプ主義Trumpism」だ。「トランプ主義」とは、都会および都市近郊在住の白人中産階級や黒人、ヒスパニック系マイノリティ有権者層に背を向け、成長の見込みのない「ラストベルト(錆びついた工業地帯)」やグローバル競争から取り残された高卒以下の低学歴白人労働者などに支えられた人種差別的、孤立主義的偏狭思想にほかならない。
その象徴が、去る1月6日、熱狂的トランプ支持者、過激グループによる連邦議事堂襲撃・占拠事件だった。バイデン政権が国家的至上課題の一つとして打ち出した「BIF」法案に同調したことを理由に一部の共和党議員たちを「殺害」「放火」の脅威にさらしたのと同じグループだ。
景気浮揚策第2弾でも規模大幅削減か
バイデン政権は、悪戦苦闘の末に成立にこぎつけた「BIF」法に続く、「アフター・コロナ」景気浮揚策第2弾として、1兆7500億ドルの子育て・教育支援、気候変動対策などの大型歳出法案の早期実現を目指しており、下院は19日、賛成多数でこれを可決した。だが、野党共和党は全議員が反対に回った。