バイデンのアメリカ

2021年11月25日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 「BIF」法案審議の際に賛成票を投じた13人の議員も今回は党への「忠誠」表明にこだわった。来年の中間選挙を控え、再選を目指す議員たちがトランプ支持層の反発を危惧したことは間違いない。

 同法案はこの後、上院審議に回されるが、ここでも「BIF」法成立に協力した共和党議員は同党過激派による再度の攻撃をかわすべく、反対に回る公算大だ。

 民主、共和両党勢力が現在50対50で拮抗する上院では、仮に共和党議員全員が反対に回ったとしても、上院議長を兼ねるハリス副大統領が1票を投じれば可決される。しかし、民主党側も、保守派のジョー・マンチン(ウェストバージニア州)、カーステン・シネマ(アリゾナ州)両議員ら〝異端派〟を抱え、楽観は許されない。両議員はかねてから「財政規律」重視の立場を貫いてきているため、同法案は「BIF」法採決の時と同様に最終成立の前に、当初の1兆7500億㌦規模から大幅削減を迫られることにもなりかねない。

党派対立は家族、社会にも波及

 しかし本来なら、インフラ整備や子育て・教育支援などは、党派を超えた国民的重要関心事のはずだ。現に世論調査を見ても、有権者の70%近くがこれらの政策課題を支持している。前政権当時、トランプ大統領自らも就任直後に、「インフラ大規模投資」の重要性を国民向けにアピールしたほか、国際競争から取り残された〝煙突産業〟といわれる重工業労働者救済のための財政出動にもたびたび言及してきた。

 ところが、バイデン政権発足後、野党に回った共和党は、政府が打ち出す政策には有無を言わさず異議を唱え始めている。議会共和党で指導的立場にあるマコーネル院内総務も去る5月、テレビ会見で「われわれは、バイデン・アジェンダ(政策課題)には100%反対だ」と言明、物議をかもした。

 さらに、バイデン政権にとって厄介なのは、対立が政党間だけにとどまらず、家族、社会全体を巻き込んだ分断にまで深く広がってきている点だ。

 世論動向の分析で定評のある「ピューリサーチ・センター」は、政権交代がスタートした今年1月末、「トランプ政権時代に米国がいかに変質したか」との見出しを掲げた調査結果を発表した。

 それによると、4年間の前政権時代を通じ、環境保護政策の撤廃、中東諸国からの移民受け入れ拒否、富裕層向けの大幅減税、国際機関からの相次ぐ脱退といった半ば強引な政権運営に対し、共和党員の85%が支持する一方、民主党員の95%が反対に回るというかつてない対立状況を引き起こした。

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