11月3日付の英ファイナンシャル・タイムズ紙で、同紙コラムニストのエドワード・ルースが、バージニアの州知事選挙における民主党の敗北はバイデン大統領と民主党に対する不吉な警告であるとの論説を書いている。
11月2日に投開票の行われた米南部バージニア州の知事選挙において、これ以上ないと言われる巧みな選挙戦を戦い、共和党のグレン・ ヤンキンが民主党の元知事のテリー・マコーリフを下して勝利した。ヤンキンの得票率は50.9%で、マコーリフは48.4%だった。
バージニア州は、昨年の大統領選挙では、民主党のバイデンが共和党のトランプ氏に10ポイント以上の差をつけて勝利した州であり、州知事も過去12年間民主党が務めていた。今回の選挙戦でも当初はマコーリフの優勢が伝えられていたが、次第にヤンキンに追い詰められ、バイデン大統領、ハリス副大統領、オバマ元大統領が応援に駆けつけても民主党は勝つことができなかった。
マコーリフは、ヤンキンをトランプの身代わりに仕立て上げる戦略をとったが、ヤンキンは巧みに トランプの支持層を繋ぎ止めつつも、郊外の有権者にトランプのクローンではないことを説得することに成功し、支持を広げた。
ルースの論説は、生徒達が学校で如何に歴史と公民を学ぶべきかについての文化戦争も戦われ、その最前線が「critical race theory」だったことを指摘している。バージニアの学校で「critical race theory」(その根底には米国の人種差別は制度的なものだとの考え方があるらしい)そのものを教えているということではないらしいが、ヤンキンは教育の左傾化や「critical race theory」にうんざりさせられ反対する親達の気分に巧みに乗じた。
9月末の討論会でマコーリフは「親達は学校に対して何を教えるべきかを指示すべきではない」と発言したが、致命的失敗だった。ヤンキンが終盤に逆転に成功した大きな要因はこの教育の問題である。彼は親達の権利を守ると言い、「子供達に何事も人種のレンズを通して見ることを教えるべきではない。就任の日に、自分は“critical race theory”を禁止する」と主張した。