創建の歴史をひもとけば、奈良時代にさかのぼる天台宗の古刹、愛知県岡崎市の瀧山寺(たきさんじ)。鎌倉幕府の恩恵を受けて栄えた後、江戸時代には3代将軍家光によって隣接地に東照宮が建立されるなど、徳川家ともゆかりが深い。この地に春の訪れを告げる奇祭といわれるのが「瀧山寺鬼まつり」だ。
重要文化財の本堂を舞台に松明(たいまつ)の炎が行き交い、面を着けた鬼が現れる勇壮な祭りで、源頼朝の祈願によって始まったとされる。
「鬼の面は祖父、祖母、孫の3面あり、地元、滝町(たきちょう)の住民の中から面を着ける冠面者(かんめんじゃ)が選ばれます。孫面を着けるのは小学生です。瀧山寺では鬼は邪鬼として祓うのではなく、福をもたらす鬼神として位置づけています。そのため、豆をまく場面で“福は内”ととなえ、“鬼は外”とはいわないのです」と語るのは、瀧山寺住職の山田亮盛(りょうせい)さん。
鬼まつりの開始は午後3時。大松明をかついだ12人衆が先導する行列からスタートする。夕方5時に仏前法要があり、辺りが暗くなると大松明に火がともされる。その後、長刀(なぎなた)振りや鬼塚供養、豆まきが斎行される。鬼塚には、昔身を清めずに面を着けて祭りに参加した2人の旅の山伏が、面が取れずにそのまま亡くなり、ここに埋められたとされる。この時の鬼面が父面と母面で、面は元来5つだったとの説もあるそうだ。田起こしや籾まきなどの所作を表した庭まつりの後、夜7時45分頃、ハイライトの火まつりとなる。
賑やかに半鐘や太鼓が打ち鳴らされ、燃え盛る三十数本の松明を手にした白装束の若衆が、鉞(まさかり)や撞木(しゅもく)、松明を持って現れた鬼とともに本堂を巡る。時間にすれば10分ほどだが、揺らめく炎が乱舞する様は迫力満点だ。
「鬼たちは本堂の回廊を3周半しますが、1周半ほど回った後に、鏡餅を手に炎の中から再び登場します。これは鬼が今年も五穀豊穣を約束するという意味なのです」
なお、火まつりで使われる鬼面は、瀧山寺にある宝物殿で見ることができる。
瀧山寺鬼まつり
<開催日>2013年2月23日
<会場>愛知県岡崎市・瀧山寺(名鉄名古屋本線東岡崎駅からバス)
<問>☎0564(46)2296
http://okazaki-kanko.jp/schedule/takisanji.htm
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