2024年12月23日(月)

勝負の分かれ目

2022年1月6日

 まるで「ハンマー」のような五味のパンチを食らうたびに顔をゆがめつつ、それでも必死にファイティングポーズを取り続けて反撃する那須川の姿からはそんな〝過去の清算〟を連想した格闘技関係者も大勢いたようだ。ちなみに那須川は「最初はよけていたが、途中からは当たりにいった」とも述べている。一発一発を噛み締めながら、あえて食らったのはやはり大きな意味があったということなのだろう。

拳から受けた格闘技の魂

 試合は急な調整を強いられ、決してベストコンディションではない中でも経験値と体重差で大きく上回る五味が終始余裕を保ちながら那須川とあえて打ち合う展開となった。拳による魂のぶつかり合いは決着がつかぬままゴング。スピーディーな動きからコンビネーションを狙った那須川は五味を圧倒することができなかったが、満足げだった。

 RIZINラストマッチだからと言って有終の美を飾れるわけではなく、逆にかつてのPRIDE王者から課題も見せつけられたことで〝格闘技は甘くないぞ〟という無言のメッセージを体感させられたことが心の奥にまで響き渡ったようだ。

 「武尊はもっと強いよ。頼むよ。いい試合をして盛り上げてもらえるように」

 リング上から五味がマイクを通じて伝えた金言に那須川はこうべを垂れ、大きくうなずいていた。

 RIZIN代表として、また自身のキックボクシング人生のラストを飾る一戦として那須川天心は今年6月、K―1最強の武尊と正真正銘の頂上決戦を迎える。ぬるま湯にどっぷり漬かることを嫌ってチャレンジ精神を失わず、次のステージへ昇ろうと弛まぬ努力を重ね続ける〝神童〟に勇気を与えられる世のビジネスパーソンもきっと多いはずだ。4月2日のRISEラストマッチ、そして6月の武尊戦、キック引退後にボクシング転向を果たす23歳の生き様を目に焼き付けたい。

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